インビジブル・ブルー


「で、誰なの?この子」

余った包帯を手際よく丸めながら、ガクが言った。艶やかな髪をポニーテールに括り、細長い指で針と糸を片付けていく。慣れたものだ。

「知るかよ」

森の中で倒れたきり、少女は眠り続けていた。昼間の奇行が幻かと思えるほど、あどけない寝顔だった。

「身元を確かめられるような物も持っていないようね」

「ああ」

ランタンだけの薄暗い部屋に、ガクの横顔と少女の手足が白く浮かんでいた。

「血が騒ぐわ」

ガクが口元を歪めた。

だろうな、と心の中で相づちを打つ。

ガクは縄師だ。それも「カリスマ」と冠名をつけてもいいほど、地下の世界には熱狂的なファンが多い。

中性的で眉目秀麗な容姿のせいもあるだろうが、何よりその繊細かつ独得な縛りのフォルムが、女の内に潜む淫靡な魂を生々しく揺さぶるのだとか。

だが、僕に言わせればコイツはただのイカれたSMオカマ野郎でしかない。しかもロリコンときている。

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