仮面夫婦のはずが、怜悧な外科医は政略妻への独占愛を容赦しない
「メールで言ってた話したいことって、このことだったんですね」
「あぁそうだ。俺は杏も、その背景にあるものも、まるごと守りたいと思ってる。夫として未熟な部分も多いが、杏を幸せにしたい気持ちは誰にも負けない」
そこまで言うと、スッと杏の肩を掴んだ。そして、射抜いてしまいそうなほどの真剣な瞳を向け、問いかけた。
「これから先も、俺についてきてくれるか?」
杏の目は徐々に潤み始め、口元には優しい弧が描かれていく。そして少しの間のあと、はにかんだような笑顔で「はい」と頷いた。
その笑みを前に、胸がトクンと弾んだ。
強くて逞しくて、だが心には清い花を飼う杏を、益々好きになる自分がいる。妻がこれほど綺麗に見えたのは、初めてかもしれない。
「大知さん、私を妻にしてくれてありがとうございます。今すごく幸せです」
「俺も同じ気持ちだ。ありがとう杏。杏にはたくさんの幸せをもらってる」
目を合わせ、微笑み合う。そして触れるだけのキスを落とした。