仮面夫婦のはずが、怜悧な外科医は政略妻への独占愛を容赦しない
翌朝、凄まじい疲労感で目が覚めたが、胸の中には幸福が広がっていた。
大知が料理を覚えたいと言うため、朝から二人でキッチンに立ち、和食を作った。
「なるほど。味噌はこの程度でいいのか」
味見をする大知は、眉間に皺を寄せ、研究モード。どんなことにも努力を惜しまない彼らしい。
「卵は、こうやって優しく握って」
「こうか?」
「そうです。後は角に軽くコツンと」
ぎこちない手で、卵を割る。だが無駄に力が入りすぎているのか、ぐちゃっと割れてしまった。
「あ、やってしまった」
「大丈夫ですよ。使えますから」
「すまない」
「その代わり、大知さんのお弁当行きですからね」
ちらりと大知を見上げながら言えば、面目ないと言わんばかりに、頭を掻きながら笑っていた。
こんなふうに、大知と笑い合える日がくるとは思わなかった。朝から幸せすぎて、眩暈がしそう。