国際弁護士はママとベビーに最愛を誓う~婚姻解消するはずが、旦那様の独占欲で囲われました~
「玲菜っ……」
彼の口から切なげな吐息ともに名前を出され、現実へ引き戻された。久嗣に名前を呼んでもらえるのはあと何度だろうと考えると切なさが込み上げてくる。
夫婦生活は寂しさでいっぱいだったが、こうして抱かれるたびに一時的に満たされ、もう少しがんばれる気になった。
一年半続いたそんな毎日に、私は疲れてしまったのだ。
「久嗣、久嗣……」
刻まれる感覚を噛みしめるように、腕を回して求めた。今夜がきっと最後になる。
「気持ちいい?」
「うん」
「今夜はずいぶん甘えてくるじゃないか」
耳もとで恥ずかしい事実を告げられ、身体の奥に隠れていた熱が沸き上がった。
「そんなことない」
首を振って顔を背けても隠せない。久嗣が好き。胸が苦しくなるくらい好きだ。
この時間は長くは続かない。寂しさが限界を越え、心はすでに張り裂けているのに何度も振り出しに戻った。
〝離婚しよう〟
そう口に出すだけなのに、心が干からびたり溢れたりするせいでうまく言えなかった。
「感じやすいよな、玲菜は」
久嗣は余裕のない声で私を煽る。その通りだ、全身で感じている。心も身体も久嗣が好きだと言っている。
「……久嗣……」
それでも、離婚までのカウントダウンは始まっているのだ──。