国際弁護士はママとベビーに最愛を誓う~婚姻解消するはずが、旦那様の独占欲で囲われました~
眠っている久嗣にささやくだけで涙が止まらなくなった。ひっくり返った今の声じゃ伝わらないだろう。もっときちんと言わないと。

「離婚しよう。……久嗣」

涙袋が痛むくらいに雫が溢れてきて、太ももにポタポタと落ちる。たまらなくなって両の手のひらで顔を押さえた。

「今、なんて言った?」
「えっ」

静まり返った室内に予想外にも声がし、すぐに手の中から顔を上げる。
眠っていたはずの久嗣が、目をしっかり開いて私を見ていた。

「離婚しようって言ったか?」

頭が真っ白になった。
どうしよう。起きている久嗣にはうまく伝えられないと思って練習したのに、聞かれてしまった。こうなるなんて予定外で、もちろんこの先の台詞はまったく考えていない。

「ご、ごめん、寝てると思って……」
「関係ない。本音なのか?」

まだ整理していない頭を彼が容赦なく抉ってくる。離婚したいのは本音だし、離婚したくないのも本音だ。覚悟を決めて最後の一夜を過ごしたはずが、まったく心の準備ができていなかった。

「寝たふりしてたの?」
「玲菜。質問しているのは俺だ」

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