国際弁護士はママとベビーに最愛を誓う~婚姻解消するはずが、旦那様の独占欲で囲われました~
「You can throw it away, if you don`t want to contact me.(私ともう会えなくていいなら、捨てちゃって)」
私にリーチへ入られた彼は目を見開いていた。さっきの映画のワンシーンだと気づいただろうか。恥ずかしい。私はなにをやっているんだろう。だけど今夜は心が躍ってしかたないのだ。こんなことだってできてしまう。
彼は離れる私へ「待って」と手を伸ばしたが、それを掴まずにひとりでバーを出る。大通りの人ごみにまぎれ、探し出されないように姿を消した。名残惜しいのに爽快感がある。
近くにとっていたホテルへ帰り、胸を抑える。
この夢は、今夜だけでは終わらせたくない――。
ところがそれから帰国までの三日間、待てども連絡は来なかった。
逃げてしまったのがよくなかったのだろうか。それとも、私の台詞通り、彼には連絡を取る気はなく紙を捨ててしまった可能性もある。
あの夜は最高の気分だったのに、帰りの飛行機ではすっかり元気がなくなっていた。