国際弁護士はママとベビーに最愛を誓う~婚姻解消するはずが、旦那様の独占欲で囲われました~
それでも連絡を待ち続けていた。ニューヨークの司法試験が終わってから電話をするつもりかもしれない、その後日本へ帰るタイミングかもしれないし、合格発表があって資格が取れてからの可能性だってある。彼も夢を叶えるためにきっとがんばっているのだ。ネットで得た知識を重ね合わせながら、連絡が来るタイミングを予想した。

しかし、待てど暮らせど連絡は来なかった。
出会った三月から月日は経ち、クリスマス、そして年末を迎える。
賑わうイベントをひとりで過ごした。小説の執筆を続けていたが、彼から連絡が来る可能性が目減りしていく感覚は、小説家の夢が叶う可能性も同じく遠のいているように錯覚した。私には待ってもチャンスは巡ってこない。そんな気分だった。
そしてようやく悟った。彼からの連絡は来ないのだ。一夜の出来事は私の中では運命的だったが、彼にとってはただの息抜きのひとつで、ありふれたことだったに違いない。
渡した連絡先の紙は、きっとバーのごみ箱に捨てられたのだろう。
私はもう、彼のことを忘れようと決めた。

しかし、次の年の三月。
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