国際弁護士はママとベビーに最愛を誓う~婚姻解消するはずが、旦那様の独占欲で囲われました~
地上へ降りるエレベーターにひとりで乗っていると、途中で男性が乗ってきた。
スマホで電話する彼の流暢な英語に「さすが」と感心し、乗り込んできた背の高い男性の顔を見上げてみると――。

「……Sorry, see you later」

嘘でしょう?

加能久嗣だ。
私と目が合った瞬間あちらの動きが止まり、急に通話を終了する。私だと気づいている。そうすぐにわかった。「え、きみ」と短く戸惑いの声を漏らした後、この密室でしっかりと私へ体を向けてくる。
ずっと待ちわびていた彼と再会してしまった。しかし私は連絡先を捨てた彼に笑顔を向けることはできず、とっさに目を逸らす。

「あの、なにか?」

自分でも驚くほど冷たい声が出た。

「え……」
「私の顔になにか付いてます?」

感じの悪い態度で髪をかき上げ、怪訝そうに眉をひそめてみる。我ながら本当にかわいくない。しかし、とてもこの人に愛想よくは振舞えない。

「俺のこと覚えてない?」
「……どちら様でしたっけ?」
「一年前、ニューヨークのシネマで会った」
「ああ! 思い出しました。……すみません、お名前はなんでしたっけ?」

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