国際弁護士はママとベビーに最愛を誓う~婚姻解消するはずが、旦那様の独占欲で囲われました~
どうしてそんなことを言うの。今までさんざん悩んで、我慢してきたのに。こちらの限界が来るまで放置していたのは久嗣なのに、私が別れると言った途端にそんな言葉をかけるなんて。
そこまで、凌太が大事?

私を揺らがせないでほしい。今でも久嗣への気持ちはあの頃のままなのに、こうも態度をコロコロと変えられては混乱する。
私が思い通りになると思ったら大間違いなんだから。ルックスもよくて仕事もできて、子持ちだと知ると驚かれる久嗣は職場でさぞや人気者なんでしょう。一度だけ彼の同僚から、久嗣の評判を聞いたことがある。理想の父親だとか。
でも、実は奥さんとは仮面夫婦でしかたなく一緒にいるだけで、子育ては私にまかせきりなのが実情。それももうすぐ離婚するときた。結婚して二年も経たずに離婚し、子どもも妻が連れて行ってしまう。
そんな現実が周囲に知られたら困るだろう。彼の不都合が私にも手に取るようにわかる。でも、すべて思い通りになんていかないんだから。放置していたら私にだって限界が来る。馬鹿にしないでほしい。

「……おやすみ」

そう告げると、久嗣はそれ以上なにも言わなかった。
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