国際弁護士はママとベビーに最愛を誓う~婚姻解消するはずが、旦那様の独占欲で囲われました~
一周して景色を楽しんだ後、持ってきたレジャーシートを広げた。
そこへランチョンマットに紙皿と割り箸、水筒を並べ、真ん中に早起きして作ったお弁当を広げる。
大人の分とは別に、凌太には小さいサイズのしらすのおにぎりや卵焼き、よく茹でたブロッコリーを用意した。

「すごいな玲菜。美味そう」
「そうでしょ? やればできるんだから。岩浜さんの料理よりは劣るけど」
「そんなことないよ。ありがとう」

久嗣のかける言葉ひとつひとつが、今はお世辞に聞こえてくる。それなのにうれしさを感じている自分が嫌になった。
凌太を間に座らせ、食事用のスタイを着ける。
久嗣と私は食べ始めると「美味しい」という言葉を互いにつぶやいたが、会話は少なくなった。代わりにおにぎりを頬張る凌太に「自分で食べてごらん」「美味しい?」と話しかける。

「マーマーマー」
「ママって言ってるのか?」
「一回多いんだよね、いつも。あともうひと息なんだけど。パパの方が先に言えそう」

無邪気に笑う凌太に私たちは笑顔を向けながら、いつもより不自然な間を感じる会話を続けていた。パパはいなくなるのに、パパと呼べるようになるのだろうか。
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