国際弁護士はママとベビーに最愛を誓う~婚姻解消するはずが、旦那様の独占欲で囲われました~
楽しげな家族に紛れ、私たちだけ暗い空気が漂っている。久嗣も箸が止まって食べる気配がないため、私は彼の取り皿に手を伸ばして片付けを始めた。
すると取り皿に触れた手首が、彼に掴まれる。
「えっ」
触れた久嗣の手の感触に戸惑い、体が震えた。混乱するまま彼に手を引っ張られ、顔のすぐ近くへと引き寄せられる。
「やっ、えっ」
「玲菜」
久嗣の切ない表情に驚いていると、無理やり唇を重ねられる。自分の意思とは関係なく涙が出ていた。我に返って反発しようとするも、後頭部を押さえられていてびくともしない。
流されまいと揺れている私を見越しての行動なのか。どういうつもり?という気持ちでいっぱいになりながら、二度とできないと思っていたキスを求められてどうしようもないくらいに胸が鳴る。
人目も憚らず、こんなところでキスをされるなんて信じられない。私が今こうされたら落ちると見抜かれているのだろうか。大正解だ。久嗣に求められたら反発できない。ずっと待っていたんだもの。
でも、また振り出しに戻りたくない。これ以上ないがしろにされて、愛に飢えた母親として凌太に接したくはないのだ。
終わりにしたい。
「やめてっ」
震える手に力を入れ、彼の肩を押し返した。
キスをしても思い通りにはならないとわかると、久嗣は戻り、なにも言わなくなった。