国際弁護士はママとベビーに最愛を誓う~婚姻解消するはずが、旦那様の独占欲で囲われました~
黙ったままで行為を受け入れていると、やがて久嗣の動きは弱まり、息を震わせ始める。
「久嗣?」
「……本当はこんなことを言いたいんじゃないんだ……」
四つん這いの姿勢では顔が見えず、おそるおそる、体を捻って確認した。振り向いた私の頬に手を伸ばして触れてきた彼の見たことのないほど切ない視線に、呼吸が止まる。
「久嗣、あの……わっ」
強引な彼の行為は終わり、今度は前を向かされて抱きしめられた。
「土曜までは俺たちは夫婦だって約束しただろ。ほかの男のところには行かないでくれ」
「……今週が凌太の誕生日だって、覚えてたの?」
「覚えてるに決まってるだろ。休みを入れてある。一年前から」
知らなかった。
風呂上がりのサラッとした久嗣の髪に手を添え、撫でてみる。私の肩に埋もれている彼の頭はピクッと反応した。
「玲菜。一日だけでいいから、俺のこと愛して。その日だけでいい。俺と本当の夫婦になってくれ」
まるで夢を見ているようだった。彼の本心はわからないままだけど、今にも泣きそうな久嗣を前に、ただうなずき、「わかった」と返事をした。
その夜は眠れなかった。頭が真っ白で、雲にでもなったような心地だった。
でも、ひとつだけ確かなことがある。凌太の誕生日だけは私たちは本当の夫婦だということ。最初で最後になったとしても、愛してると伝えていいのだ。