暗い暗い海の底
「おい、何をするんだ?」
 と彼の声が耳に届いてきたので。
「助けてきます」
 とだけ答えた。

 幼い時からこの川で遊んでいた私にとって、この川の様子は手に取るようにわかる。今日はまだ穏やかな方。水の量も少ない。

「すいません」

 川の周辺に集まっていた人を押し退け、川の浅いところまで靴が濡れるのも構わずにパシャパシャと走った。

 ここからこれを投げれば、あそこまで届くかも。フリスビーを投げるように、私は浮輪を投げた。もちろん浮輪の先には紐がついていて、その紐は私の腕にくくりつけてある。

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