Dear my girl
一孝は大きく安堵の息を漏らすと、沙也子をベッドのふちに座らせた。
自分は床に座り、沙也子の両手を握って見上げてくる。
「誤解させて悪かった。ちょっと避けてたのは認める。沙也子を見ると、どうしても触りたくなるから。背中を向けてたのも、手を出さないためっつーか……」
意味が分からず、沙也子は眉をひそめて首をかしげた。
「触っちゃだめなの……?」
一孝はわずかに目を瞠り、うっすらと頬を染めた。
目を泳がせ、言葉を選ぶように逡巡する。やがて軽く息を吸い込み、沙也子を真っ直ぐに見つめた。
「俺がいつもガツガツしてるから、無理させてんじゃねえかって反省した。もし嫌だと思っても、きっと沙也子は言えないんじゃないかって」
沙也子は涙を散らすように瞬きした。
「無理って……嫌って、わたし、そんな感じだった?」
「いや……でも、手加減できてない自覚はある」
そりゃあ睡眠削るし体力も使うのだから、疲れて当たり前だと思う。
逆になぜ一孝が疲れないのか解せない……。
(それで気を遣ったということ?)
言葉を紡げずにいると、一孝は切なげに目を細めた。
「お前に俺がどう見えてるのか知らねえけど、余裕なんてあるわけない。好きだから抱きたいし、大事にしたいから我慢しようと思っても、空回って結局傷つけてるし……」
彼はそこで握っていた手を離すと、前髪をかき上げて俯いた。
「俺……、もう嫌われた?」