Dear my girl
Make me sweet. 2
大学が終わってから、さっそく律に連れられてバイト先へ向かった。
沙也子も度々訪れているので、そこまでの緊張はなかった。
一軒家風のこぢんまりとした可愛いカフェ。お菓子の家を思わせる外装で、遊び心が溢れている。
メルヘンチックな雰囲気満載なので、客層が女子ばかりなのも頷ける。
店内は天井が高く、等間隔に配置されているペンダントライトの照明がお洒落だ。
しかし、やはりメルヘンの世界。うさぎやクマなど、森の動物の置物があちこちで存在を主張していて、とても可愛い。
インテリアは木製で統一されており、木のぬくもりを感じさせる空気で、沙也子はこのお店が好きだった。
スタッフは店長を含めて全員女性で、沙也子がよく遊びに来ることもあり、彼女たちとも顔見知りだ。
律が欠勤の説明と謝罪をすると、みんな快く受け入れてくれた。いい人たちだなあと思ったが、実は他のスタッフも誰かを代わりに連れて来るのはよくあることらしい。
何度も頭を下げた律は、沙也子のことをくれぐれも頼み、原稿をするべく急いで帰って行った。
律の代わりに入るシフトは、平日は17時から20時、週末は10時から18時で、お休みは月曜とのことだった。沙也子の勤務は本日火曜日から始まり、日曜までとなる。
案内された更衣室で、手渡された制服を着て鏡の前に立った沙也子は、激しく赤面した。
既視感のある恥ずかしさだった。高校のころ小悪魔コスプレをした時のいたたまれなさに酷似している。
白いブラウスに、襟元には赤いリボン。そして赤と白のギンガムチェックのエプロンをつけ、スカートは膝丈で黒。
問題はこのギンガムチェックのエプロンで、胸元を支えるように大きく開いているデザインなのだ。自分が着ると、なんだか胸が目立ってしまうような……。
律や他のスタッフを見てとても可愛いと思っていたが、自分の姿だとかなり気恥ずかしくて、隠したくなってしまう。
鏡の前でうだうだしていると、ドアがこんこんとノックされた。
「は、はいっ」
「谷口さん、サイズどうかな? 入るよー」
先輩スタッフが、ひょこっと顔をのぞかせる。律の代わりに入る間、沙也子の面倒を見てくれる人だ。
「あの、サイズは大丈夫なんですけど……」
沙也子が顔を赤らめると、先輩はぱああっと瞳をきらきらさせた。
「わ~、すっごい似合ってるよ! やっぱ谷口さんみたいな綺麗なおムネだと映えますなあ」
まさしくそれが最大の懸念なのだが、他のスタッフが当たり前に着ているのに、恥ずかしいとは言えなかった。
「ほ……ほんとですか?」
「うん、めっちゃ可愛い。自信もって!」
ものすごくいい笑顔で褒めてもらい、沙也子は少し気を取り直した。
女子しかいない環境なのだから、恥ずかしがっていても仕方がないし、何より律のピンチヒッターだ。
役に立てるよう頑張ろうと、気持ちを引き締めた。