Dear my girl
「お帰りなさい、涼元くん。ごはんにする? お風呂にする?」
出迎えた沙也子を見て、一孝は目を見開いて固まってしまった。
上から下から胸元から。まじまじと見つめられて、沙也子は額に汗をかいた。頬に熱が集中する。
すっかり日常に戻った沙也子は、一孝のリクエスト通りハンバーグを作り、すぐにお風呂に入れるようバスタブにお湯を張った。
あとは一孝がバイトから帰るのを待つだけという段になり、例の制服を身に着けて待っていたのだが。
出迎えるセリフも律の提案だった。
絶対に喜ぶと言っていたけれど、一孝の反応が薄くて、逃げ出したい気持ちになってくる。
一孝はようやく口を開いた。
「……なんで」
「えと……、今回、涼元くんのおかげで無事にバイトできたし、お礼がハンバーグだけじゃ足りないと思ったの。それで、律に相談したら、きっと喜ぶからって。制服は、店長さんが記念にくれて……」
沙也子は顔を赤らめながら、しどろもどろに説明した。
恥ずかしさを懸命にこらえていると、一孝は無反応で玄関を上がり、洗面所に向かってしまった。
ざぶざぶと顔を洗う音が聞こえてくる。激しいうがい手洗いだった。
沙也子はショックだった。
(こ、これは『すべった』っていうんじゃ……)
ちょっと泣きそうだった。
せめて夕食はきっちり用意しようと、キッチンに向かっていると、いきなり後ろから抱きしめられた。
「す、涼元くん?」
「……やっぱ、本物だよな」
「え、偽物がいるの?」
「ちげーよ、何度も脳内に出てくるから」
一孝は沙也子の存在を確かめるように力を込めると、いきなり横抱きに抱き上げた。
「わあぁっ、なんで!」
急に身体が浮いたことが怖くて、慌てて咄嗟にしがみついた。至近距離で見つめられ、ドキッとする。
「お前にする」
「な、なにが?」
こちらの戸惑いをまったく気にかけることなく、一孝は沙也子を自分の部屋に運んでいく。
ベッドに腰かけ、沙也子を膝の上に座らせた。
彼を跨ぐように向かい合わせになり、ようやく理解した。
気づいた途端、ものすごく恥ずかしくなった沙也子は、捲れてしまうスカートをぐいぐいと押さえた。
「す……するの? 今から……?」