Dear my girl

 家に着くや否や、一孝は先に沙也子を押し込むようにしてドアを閉めた。

(? どうしたんだろ)

 靴を脱いで玄関を上がると、また性急に手を引かれた。

 何を急いでいるのか。沙也子が首をかしげていると、リビングに入ったところで、いきなり壁に押しつけられた。すぐに唇を塞がれる。

「ん……っ 涼元くん?」

 びっくりしている沙也子に一孝は目を細めると、耳元に唇を寄せた。

「嫌だったら言って。今ならやめられる」

 吐息が耳をくすぐり、沙也子はぴくんと肩を震わせた。言われた意味を理解して、顔がかっと熱くなる。

「嫌なわけないよ、でも、ここ、」

 真っ赤になって眉を下げると、一孝は壁に腕をついて沙也子を閉じ込め、頬に軽くキスをした。

「沙也子がいいなら、今すぐ抱きたい」

 熱を帯びた瞳で見下ろされ、腰の力が抜けそうになる。彼にこんな顔をさせているのは自分なのだと思うと、身体の奥が熱くなった。

 追い詰められる形で見下ろされても、一孝が相手ならば、まったく恐怖は感じない。むしろドキドキと胸が高鳴っていく。

 沙也子は一孝の首に腕を回した。

「い……いいよ。わたしも、涼元くんとくっつきたいから」

 一孝は安堵したように息を漏らし、沙也子の耳朶を軽く咬んだ。
 耳や頬にキスを繰り返しながら、沙也子のカットソーと下着を胸の上までたくし上げる。胸に直接触れられて、沙也子は息を乱した。

 大きな手がやわやわと胸を愛撫し、時折指が胸の先を掠める。彼の唇が首筋に降りてきて、ちくんと痛みを感じた。

「す、涼元くん、痕……」

「見えるとこにはつけないから」

 


「あっ! やぁあっ、あ……っ」

 自分よりも沙也子の身体を知っているであろう一孝に、優しく、でも性急に高められていく。

「や、やぁ……も、立ってられな、」

「……沙也子、いい?」

 唇が触れそうな距離のまま囁かれて、沙也子は何も考えられずにこくこくと頷いた。頭が真っ白になりそうだった。

 一孝がパッケージを歯で噛みちぎった。
 それをぼんやり見ていると、彼はばつが悪そうな顔をした。

「いや、いつも所持してるわけじゃ……こういう時、取りに行くのも間抜けっつーか、備え的に財布に入れてただけで」

「うん?」

 よく分からなかったが、とりあえず頷いておいた。
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