Dear my girl
一孝は沙也子の腰を支え、右膝を抱えた。
「ん……、あっ、」
下から突き上げられて、沙也子は彼の首に腕を回してしがみついた。
立ったまま揺さぶられる初めての感覚に、溢れだす声を抑えられない。一孝に対して小柄な沙也子は、支えられながらも浮いてしまう。
「……はぁっ、あっ、やぁっ、ん、」
沙也子の唇は一孝の耳元に近くて、この声も吐息もすべて聞かれていると思ったら、身体中が熱くなった。
崩れ落ちるまいと必死にしがみついていると、首に何度も唇が落とされる。その度に一孝の熱い吐息を感じて、ゾクゾクと背中が反り上がる。
「沙也子……沙也子、痛くねぇか」
沙也子はふるふると首を振った。
苦痛どころか、すぐにでも達してしまいそうだった。
キスしてほしい。そう思って見つめると、咬みつくように塞がれた。
触れる手や眼差し、仕草からも彼の愛情が伝わってきて、幸福感で満たされる。
弱いところを重点的に刺激され、逃しきれない快感に涙がぽろぽろとこぼれた。
沙也子が大きく身体を震わせると同時に、一孝も力強く沙也子を抱きしめた。
息が整わないまま見つめ合う。
もう一度唇を重ねた。
身体に力が入らず、沙也子はゆっくりと座り込んだ。
「……ふふ、ぐちゃぐちゃ」
自分達の惨状に、思わず笑ってしまった。もう少し歩けば、ソファだって、ベッドだってあるのに。
でも、この余裕のなさが少し嬉しかった。そんなこと、恥ずかしくてとても言えないけれど。
後始末を済ませた一孝は、沙也子のそばに屈んだ。
「ごめん。お詫びに洗ってやる」
「え? 違うよ、そんなつもりじゃ、」
一瞬洗濯の話かと思ったら、抱き上げられたので沙也子は急激に慌てた。
「いい! いいです、自分で洗うから!」
抵抗虚しく、浴室に連れて行かれたのだった。