Dear my girl

 とりとめなく学校の話をしていると、ふと一孝が言った。

「テスト勉強、見てやるよ。いつもの礼に」

「えっ」

 カレーが喉に詰まりそうになった。数式の間違いを指摘されたことを思い出し、沙也子の頬が赤くなる。

「いいよ。涼元くん、忙しいのに。それに、住まわせてもらってるんだから、これくらい当たり前だよ。むしろ足りないと思ってる」

「それは親父と谷口との話だろ。俺がどう思おうと勝手だし、バイト先からテスト前は入れないように言われてるから時間もある」

 あまりのありがたさに、心がぐらぐら揺れた。だが、頼っていいものか迷う。先日ソファでそのまま眠ってしまったことが尾を引いていた。このまま無意識に甘える癖がついてしまいそうで、そんな自分が怖い。

 一孝は沙也子をちらっと見ると、カレーを口に運んだ。

「無理にとは言わねえけど」

「……ううん、ありがとう」

 結局、あいまいに濁してしまった。

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