Dear my girl
戻ってきた世界史のテストが予想以上にいい点数だったので、沙也子は思わず「うおお」と唸った。
一孝に勉強を教わったことでなんとなくコツをつかみ、毎度平均点をさまよっている教科も全体的に底上げされている。
何より驚いたのは、英語と数学だ。いつもは赤点を免れれば御の字なのに、もしかしたら平均点を大幅に超えたかもしれない。
武者震いに近い気分で震えていると、順位が貼り出されたと言ってクラスメートたちが廊下に出て行った。
「ここって順位を公開するの? まだ結果ももらってないよ」
前の学校では、中学も高校も個別に知らせるだけだった。沙也子は少々いたたまれない気持ちで律を見た。
「総合点順に100位までね。あとは科目別に上位10名が点数つきで発表される。各個人には帰りのホームルームで渡されるけど……順位見に行く?」
律からは、あわてて見に行く必要のない余裕を感じた。
沙也子は個人別に出た結果を家で一孝に見せればいいと思っていたので、にわかに焦った。
いつもどうにか真ん中をキープしていた沙也子の目標は、100位以内に滑り込むこと。それは一孝にも伝えてあるので、先に結果を知られてしまったら非常に気まずい。
「い、行ってくる」
掲示板に向かうと、人だかりができていた。順位を確認した人からはけていくので、すぐに結果を見ることができた。
胸の前で両手を握り締め、100位から順に眺めていく。沙也子の名は見つからない。
緊張と不安と期待でドキドキしながら遡っていき、80位まで目を通したところでテンションはだだ下がりだった。どうやらダメだったようだ。
ふと横を見ると、一孝が掲示板を見ていた。
彼もこちらに気づき、勝ち誇ったように口角を上げた。
「やればできるじゃん」
「えっ、わたし? 載ってなかったよ」
一孝は呆れたように目を細め、貼り出された大きな模造紙を指さした。
彼の指先を辿ってみると、そこには、
32位 谷口沙也子
「……。うそ……、うそっ!」
何度も目をしばたたかせる。間違いなく、自分の名前だった。