クールなあおくんに近づきたい!〜あと10センチ、きみに届け〜
…
子、犬?
頭の中で、近所の鈴木さん家のトイプードルのチャロがワン!と鳴いた。
「………子犬かぁ。」
私は一度強張った顔を緩ませて笑う。
なんだ、びっくりしたぁ。
ハムスターの次は子犬かぁ。
小さい動物とご縁があるなぁなんて思いながら、私はまた人差し指で背表紙を追いはじめる。
「うんうん。子犬。」
カベ君も私の倍速で背表紙をなぞりながらメガネを直した。
「…あ、そうだ、カベ君。」
私はこの機会に、気になってることを聞いてみることにした。
「ん?」
私は綻んでしまう顔を我慢しきれないまま、ヒソヒソ声でカベ君に耳打ちする。
「カベ君は、花乃ちゃんのどういうところが好きなの?」
カベ君がピタ、と固まってヘラヘラする私を横目で見た。
「?」
カベ君が無言で本に目を戻して、人差し指をスライドさせながら私から遠ざかるように少しズレる。
「…そうだな。強いて言うなら一途なところ、かな」
「一途?」
…花乃ちゃんが?
んん?
あんまりイメージが湧かないけど、カベ君に対して一途ってこと、だよね?
だとしたら、私が知らないだけで実はもうラブラブ…!?