クールなあおくんに近づきたい!〜あと10センチ、きみに届け〜
「外に出ようとしたら、逢和君がそのテスト用紙を私の下駄箱に入れてくれてて。
その時逢和君は私に気付かずに帰っちゃったんだけどね、」
これまであまり私を直視しなかったカベ君が、まっすぐ私を見てる。
そんなに気になるのかな…?
「そのテスト点数悪かったから、私、うさぎが泣いてる落書きを端っこに描いてたんだけど…見たらね、フフ、うさぎの涙に被せるように赤いほっぺとドーナツが描き足されてて、うさぎが嬉しそうにドーナツ食べてる落書きに変わってて。」
思い出すとほっこりして、つい笑ってしまう。
「ドーナツ食べて元気出してってことかなぁって思って嬉しくて。つい帰りに買っちゃったよ、ドーナツ!」
不安でいっぱいだった新しい学校生活が、逢和君のうさぎのおかげで一気に楽しみになったんだよね。
あれは本当に嬉しかったなぁ。
「…チカにはそれ、言ったの?」
「あ、そういえば言ってないなぁ。」
今度、あの時はありがとうって言わなくちゃ。
「…寧々ちゃん」
名前を呼ばれてカベ君を見ると、ニコリともせず私をまっすぐ見てる。
「…?」
不意にカベ君から伝わる緊張感に、私もカベ君の目を見て手を止めた。
すると
カベ君の手が、
本棚にある私の手に、重なった。
「…それ、
チカじゃなかったら…どうする?」
「…え?」