クールなあおくんに近づきたい!〜あと10センチ、きみに届け〜
「小学校の時、いじめられてた俺をチカがかばって、代わりに標的になっちゃったことがあったんだけど。」

「え…っ」

「ハハッ。意外?昔は俺もチカもチビだったからね。なめられやすかったんだ。」

カベ君は笑い話をするみたいに楽しそうに話す。

「チカは物隠されたり水ぶっかけられたり、ひどいこと言われて殴られて、蹴られて。
何もできなかった俺を責めることもしなくてさ。
あいつは、何されても絶対泣かなかった。
一人でしっかり地に足つけて立って、前だけを見てた。
凄かったよ。
一切やり返さないのに、あの芯の強い目だけで相手を圧倒してた。」


逢和君の温和だけど芯の強いあの目を思い出して、胸が疼く。


「そんなチカにクラスのみんな憧れちゃってさ。
あっという間にいじめっ子のほうがボッチになっちゃったよ。
昔から嘘みたいにかっこいい奴だった、近海逢和は。」


そこまで喋って、カベ君は目を細めた。


「…そんな、チカがね。
宿研のキャンプファイヤーのあと、帰ってこないと思って探しに行ったら宿の入り口んとこで一人で泣いてたんだ。」


「!」
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