クールなあおくんに近づきたい!〜あと10センチ、きみに届け〜
数時間前に出た校門を再びくぐると、サッカー部の熱気あふれる声が聞こえてくる。
カベ君もキヤ君も頑張ってるなぁ、と少し歩く速度を緩めたとき、背後に気配を感じた。
振り返ってみると、
…誰もいない。
「…?」
気のせいか。
私は再び校舎の中へと歩みを進めた。
上履きに履き替えて廊下を抜け、1年6組に着く。
シンと静まり返る教室に、サッカー部の声が小さく滲んだ。
前扉を開けてすぐ、逢和君の席がある。
ポケットからシャーペンを取り出すと、
これをくれた時の逢和君の笑顔を思い出した。
「…」
これを手放したら
逢和くんと過ごした日々の証が
完全になくなる。
…離したく、ないなぁ。
…
「…ダメだ。決めたんだから。」
私は痛む胸をぎゅっと押さえて、
逢和君の机の引き出しに、シャーペンを入れた。
…さようなら。
逢和君。
そして教室を出ようと踵を返した
次の瞬間
「っ、!?」
私は羽交い絞めにされながらハンカチのようなもので口を塞がれ
真っ暗に、なった。