クールなあおくんに近づきたい!〜あと10センチ、きみに届け〜
「…俺たちの敵は、どこにいるのかもわからない神様だから」


俺は天を仰いだ。

あるのは、無機質な天井。

見えない、敵。


「…俺にできることがあるとすれば、ヒューイをどうにかすることだと思った。
サラを気に入ったっていう神様の方も、俺が寧々に興味を無くしたと思えば呪う必要がなくなるかもしれないし…
とにかく引っ掻き回したかった。
呪いの連鎖を止めるために。」


力なく笑った俺を見て、頼堂はため息交じりに静かに聞く。


「…あんた、何キロ痩せた?」

「さぁ」

「呆れた。そんなうまくいくかもわかんないこと、よくやったわね」

「自分でも正気の沙汰じゃないなと思うよ。

……でも」






目を閉じて、


思い出す。






「嫌いな女にキスしてでも、ヒューイを殺してでも…
どんな手を使ってでも、呪いを解きたかった。」






ガラス越しの小さな手

柔らかそうな茶色がかった艶のある髪を揺らして

恥ずかしそうに俺を見上げるかわいい目




たどたどしく俺の名前を呼ぶ、声






「ただ普通に、触りたかった。

…寧々を抱きしめたかった。」






目を閉じる俺の頬に、一筋の何かが伝った。

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