クールなあおくんに近づきたい!〜あと10センチ、きみに届け〜
逢和君も私の背中に手を回して、力強く抱きしめ返してくれる。
「寧々……すげぇ。夢みたい。」
耳元で逢和君の声がする。
逢和君の匂いがする。
体温を、鼓動を感じる。
肌と肌が触れて、擦れて、命を感じる。
「…寧々。顔、もっと見たい」
逢和君は腕の力を緩めて、穏やかに笑いながら私の顔を覗き込むと親指で優しく涙を拭ってくれる。
「…逢和君…、本当に…?なんともない?どこも苦しくない?」
俄に信じられなくて逢和君の頬に両手で触れて確かめる。
すると、逢和君が目を細めた。
「……ちょっと苦しいかも」
「えっ、」
慌てて手を引っ込めようとすると、逢和君がそれを掴む。
「…寧々が可愛いすぎて、胸が苦しい。」
「…!!」
突然の甘いセリフに、一気に顔に熱が集中する。
「……フハッ。真っ赤。」
「み、見ないで…っ」
逢和君の攻撃力1000の笑顔は、やっぱり、天使みたいに可愛くて、さらに熱が上がる。
それはオレンジの空も手伝って、まるで、夢の中みたいで
顔を覆う手の隙間から、その綺麗な景色を覗き見ながら
少し怖くなるくらい逢和君を好きだと思った。
逢和君が私の顔から手を退けて、覗き込む。
「ねぇ。こんなもんじゃないよ、寧々」
9月の夕方の風が
意地悪く笑う逢和君の髪をふわりとなびかせる。
それは実りの秋の始まりと
私たちの新しい日々の始まりを
確かに、優しく、教えてくれていた。