クールなあおくんに近づきたい!〜あと10センチ、きみに届け〜
◇決意表明
「アナフィラキシーショック?」
朝の挨拶が飛び交う廊下。
すれ違った女の子たちの声が聞こえた。
「そうそう。それで救急車で運ばれたって。」
「え!こわ…何のアレルギー?」
「それが、わかんないんだって。」
「わかんないの!?超怖いじゃん」
「ね。まぁあんな田舎だし、こっちにはいないような得体の知れない虫とかいそうじゃない?」
「あー確かにー」
…
得体の知れない、虫。
「寧々、大丈夫?」
廊下で足を止めていた私に、花乃ちゃんが声をかけてくれる。
「…あっ、大丈夫!えっとー、あっ、教室通り過ぎてたぁ、あはは」
作り笑いする私を見抜いて心配そうな顔をする花乃ちゃん。
「…無理しないで、寧々。」
花乃ちゃんが手を握ってくれる。
「…うん。ありがとう、花乃ちゃん。平気だよ!」
教室に入って、私は窓際角、一番後ろの席に座る。
朝の天気予報では今日は晴れって聞いてたのに、窓の奥には曇り空。
カーテンを揺らす湿った風が梅雨入りを教えてる。
私は無意識に、窓の外の登校してくる生徒の中に逢和君の姿を探していた。
宿泊研修から土日を挟んで、今日。
逢和君は、私から一番遠いあの席に、いない。