幽霊。〘透明になった日〙
唇から吐息が漏れて、少しだけ動いたつま先が床と擦れ合い高い音を出してしまった。

「え…!」

染谷くんは慌てて振り向き私の存在に気づく。
私は勇気を出して声をかける。

「1年の時の合唱祭の課題曲だね」

『旅立ちの日に』。どのクラスも必ず歌った課題曲
「き、聴いてた…?」

「聴こえちゃった」

「……下手くそだったでしょ」

「ううん。綺麗だなって思ったよ。」

すると彼は下を向き首を横に振る。

「そんな訳ないよ。音程間違えちゃったし」

「音程がどうかよりも、楽しそうで聴き入っちゃった。染谷くんはこの曲好きなの?」
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