その溺愛、危険度99%につき
貸してもらったままになっていた朔の黒いパーカーを手に持って、私は家を飛び出した。
外はもう真っ暗で、冬の冷たい空気がツンと鼻をさす。
向かう先は、朔の家。
暖かみのない部屋と、朔の温度のない瞳がリンクする。
電車に乗って、走って、走って。
ようやく着いた繁華街の大通りを、人並みを避けながら走り続けた。
『じゃあもう、そのままでいいよ。』
ふと、どこにでもあるようなベンチが気になったのは、頭の中であの声がしたから。
肩で息をしながら、ただベンチを見つめる。
お母さんも言ってた。
中学生の時、私はベンチでぐったりしてたって……。
その先にある路地裏に目を向ける。
ぐるぐる、頭の中がまわる。