その溺愛、危険度99%につき
雨の降っていた、ある冬の日。
路地裏、雨に濡れた男の子。
『──触んなよ、うぜぇな』
『だから?おまえには関係ないだろ』
『……どうでもいいだろ。俺のことなんか』
脚の傷跡が、ちり、と痛んだ気がした。
大きくて寂しそうな背中、首のほくろ、何も映していないかのような冷たい瞳。
「……思い出した……」
どうして今まで忘れてたんだろう……。
あの時の男の子は、朔だった。
私のことを助けてくれたのは、朔だった。
……やばい、なんか泣きそう。
泣いてる暇なんかないのに。朔のところに行かないと……。
前にも来たことのある朔のマンション。
そのエントランスを抜ける。
エレベーターに乗って、朔の部屋の前へ。
乱れた呼吸を整えることもせずに、私はインターホンを押した。