憎きセカンドレディに鉄槌を!(コミカライズ原作『サレ妻と欲しがり女』)
「肝心なときにいつも噛んじゃうし、ドジもする俺だけど、全身全霊をかけて美羽を愛して、守り抜くと誓う! もちろん、浮気なんて絶対にしない」
綺麗でまっすぐな瞳が、私だけに一心に注がれる。それに射抜かれて胸が熱くなり、涙と一緒に込みあげた。
「学くん、ありがとう」
大きな手から、かわいらしいドライフラワーを受け取り、潰さないように優しく両手に包む。
「こんな私でいいの? 本当に後悔しない?」
「しないよ。美羽だから、美羽じゃきゃ駄目なんだ」
学くんの両手が音もなく下ろされるのを見、慌てて利き手を掴む。ドライフラワーは反対の手でしっかり保持した。
「バツイチで腹黒な女を好きなんて、学くん本当に変わってる」
「…………」
「学くん?」
私が声をかけた瞬間、ハッとした表情になる。目に映った顔が、耳まで一気に朱に染った。
「美羽、悪いけど手を放して。カメラの電源を切ってくる」
「あ……」
(なにやってんのよ。防犯カメラの存在をすっかり忘れて、学くんに告白されてしまった――)
「美羽、本当に俺と付き合ってくれるの?」
しっかり防犯カメラの電源を消した学くんが私の傍にやって来て、心配そうな面持ちでふたたび訊ねる。
「冴木学さん、私でよければ、どうか付き合ってください!」
目をつぶり、もらったドライフラワーを、胸に当てながら伝えた。一ノ瀬さんに教えてもらった言葉――学くんの傍にいてドキドキすることが、自分の気持ちを表している証拠だから、臆することなく告げることができた。
「ありがとう。恋人として、これからもよろしく」
お礼を言った唇が、私の唇に重ねられる。唇の先に少しだけ触れて、すぐに離れていくキスは、学くんの優しさに比例してるみたい。
「学くんとのキス、不思議な感じ……」
「嫌だった?」
私の顔を覗き込む面持ちが、暗く沈んだ様相になる。
「嫌とかじゃなくて、なんか背徳感があるっていうか。しちゃいけないコトをしてるみたいで」
「背徳感って、未成年としてるワケじゃないのに」
「そうなんだけど、なんかほら、あの小さかった学くんにキスされるなんて、変な感じが拭えないよ」
「俺はもう小さくないのに……」
学くんは、捨てられた子犬のようにしょんぼり顔をする。こういう表情をされると、昔のことを思い出してしまうのに。
(――怒って否定しないところも、学くんのいいところなんだよね)
落ち込んだ顔をなんとかしたくて、左手で学くんの頬に触れながら問いかける。
「そんな顔した学くん、かわいいし」
背の高い彼をしっかり仰ぎ見ると、おもしろくなさそうに唇が突き出た。
「美羽、俺のことからかってるだろ?」
「からかってないよ」
「目が笑ってる」
「好きって言ってくれないの?」
ねだった私に、学くんがいきなり抱きついた。身動ぎできないくらいに強く抱きしめて、耳元に顔を寄せる。手の中にあるドライフラワーが潰れないか心配になった。
「どうにかなりそうなくらいに、美羽が好きだよ」
噛まずに自分の気持ちをきちんと言えた彼に、今度は私が秘めていた気持ちを告げる。それを耳にした学くんは放り出すように私を解放し、背中を向けてしまった。
「学くん?」
「ごめっ、なんか夢みたいで、信じられなくて……」
「夢じゃないよ。私は学を愛してます」
大きな背中に手を添えてもう一度伝えたら、目尻に浮かんだ涙を袖で拭ってから振り返る。顔を真っ赤にした学くんは、嬉しそうに笑いかけて。
「俺も美羽を愛してる!」
持っているドライフラワーと同じくらいのかわいらしさを感じさせる笑顔の学くんを独占したくて、踵をあげながら顔を寄せてキスをしたのだった。
ふたりの恋については、別枠で連載しますのでTo be continued.
上條宅の現状を知るべく引き続き、『憎きセカンドレディに鉄槌を!』をお楽しみください。
綺麗でまっすぐな瞳が、私だけに一心に注がれる。それに射抜かれて胸が熱くなり、涙と一緒に込みあげた。
「学くん、ありがとう」
大きな手から、かわいらしいドライフラワーを受け取り、潰さないように優しく両手に包む。
「こんな私でいいの? 本当に後悔しない?」
「しないよ。美羽だから、美羽じゃきゃ駄目なんだ」
学くんの両手が音もなく下ろされるのを見、慌てて利き手を掴む。ドライフラワーは反対の手でしっかり保持した。
「バツイチで腹黒な女を好きなんて、学くん本当に変わってる」
「…………」
「学くん?」
私が声をかけた瞬間、ハッとした表情になる。目に映った顔が、耳まで一気に朱に染った。
「美羽、悪いけど手を放して。カメラの電源を切ってくる」
「あ……」
(なにやってんのよ。防犯カメラの存在をすっかり忘れて、学くんに告白されてしまった――)
「美羽、本当に俺と付き合ってくれるの?」
しっかり防犯カメラの電源を消した学くんが私の傍にやって来て、心配そうな面持ちでふたたび訊ねる。
「冴木学さん、私でよければ、どうか付き合ってください!」
目をつぶり、もらったドライフラワーを、胸に当てながら伝えた。一ノ瀬さんに教えてもらった言葉――学くんの傍にいてドキドキすることが、自分の気持ちを表している証拠だから、臆することなく告げることができた。
「ありがとう。恋人として、これからもよろしく」
お礼を言った唇が、私の唇に重ねられる。唇の先に少しだけ触れて、すぐに離れていくキスは、学くんの優しさに比例してるみたい。
「学くんとのキス、不思議な感じ……」
「嫌だった?」
私の顔を覗き込む面持ちが、暗く沈んだ様相になる。
「嫌とかじゃなくて、なんか背徳感があるっていうか。しちゃいけないコトをしてるみたいで」
「背徳感って、未成年としてるワケじゃないのに」
「そうなんだけど、なんかほら、あの小さかった学くんにキスされるなんて、変な感じが拭えないよ」
「俺はもう小さくないのに……」
学くんは、捨てられた子犬のようにしょんぼり顔をする。こういう表情をされると、昔のことを思い出してしまうのに。
(――怒って否定しないところも、学くんのいいところなんだよね)
落ち込んだ顔をなんとかしたくて、左手で学くんの頬に触れながら問いかける。
「そんな顔した学くん、かわいいし」
背の高い彼をしっかり仰ぎ見ると、おもしろくなさそうに唇が突き出た。
「美羽、俺のことからかってるだろ?」
「からかってないよ」
「目が笑ってる」
「好きって言ってくれないの?」
ねだった私に、学くんがいきなり抱きついた。身動ぎできないくらいに強く抱きしめて、耳元に顔を寄せる。手の中にあるドライフラワーが潰れないか心配になった。
「どうにかなりそうなくらいに、美羽が好きだよ」
噛まずに自分の気持ちをきちんと言えた彼に、今度は私が秘めていた気持ちを告げる。それを耳にした学くんは放り出すように私を解放し、背中を向けてしまった。
「学くん?」
「ごめっ、なんか夢みたいで、信じられなくて……」
「夢じゃないよ。私は学を愛してます」
大きな背中に手を添えてもう一度伝えたら、目尻に浮かんだ涙を袖で拭ってから振り返る。顔を真っ赤にした学くんは、嬉しそうに笑いかけて。
「俺も美羽を愛してる!」
持っているドライフラワーと同じくらいのかわいらしさを感じさせる笑顔の学くんを独占したくて、踵をあげながら顔を寄せてキスをしたのだった。
ふたりの恋については、別枠で連載しますのでTo be continued.
上條宅の現状を知るべく引き続き、『憎きセカンドレディに鉄槌を!』をお楽しみください。