憎きセカンドレディに鉄槌を!(コミカライズ原作『サレ妻と欲しがり女』)
***
私の実家は今住んでいるマンションから、徒歩10分くらいのところにある。
悪阻で具合の悪い私の様子を心配した母親が時々顔を出してくれていたのだけれど、悪阻になってからまともに食べ物を口にしていないことや、そのせいで良平さんに迷惑をかけていることを理由に、実家で静養することになった。
「美羽、体調が良くなるまで、実家でしっかり体を休めるといい。それがおなかの子のためにもなる」
笑顔で送り出してくれた良平さんのお蔭で、気兼ねなく実家で養生することができた。
実家で生活してから2週間後、悪阻もだいぶ楽になり体調も以前に比べると、かなり安定した。近所くらいなら歩くことができるようになったので、久しぶりに自宅マンションに帰ってみる。
(この時期は決算期で職場は大忙しなのに、疲れて帰ってからの家事は大変だよね)
良平さんが独身のときの雑然とした部屋を思い出しながら、自宅の鍵を開けて中に入る。期間限定で独身でいる良平さんのひとりで暮らしだから、生活感あふれる荒れ放題のリビングを予想していたのにーー。
「あれ? すごく綺麗に片付いてる……」
悪阻でまともに掃除もできていなかったリビングが、まるでハウスキーパーを頼んだみたいに、とても綺麗になっていた。
(私が帰ってくることだって知らせていないのに、異様ともいえるこの綺麗さはいったい?)
そう思いながらキッチンや洗面所、浴室を見て回った。ゴミはコンビニの弁当を食べた容器があることで、自炊していないのが明白で、キッチンが綺麗な理由がわかったのだけれど。
「洗面所やお風呂場の排水溝、髪の毛が1本もないっていうのも、彼らしくない……」
そう考えているうちに、実家に帰っている最中は、例のメッセージが一通も送られていないことに気づいた。
妙な胸騒ぎを抱えながら、寝室の扉を開ける。ベッドの上も綺麗に布団が敷かれたままで、良平さんが使ったあとがまったく感じられなかった。
(ものを食べた形跡があるんだから、ここに帰ってきてるハズなのに、もしかしてソファで寝ているのかな?)
顎に手を当てながら、ベッドの脇でそんなことを考えたときに、スリッパを履いた足がなにかを踏みつけた。なんだろうと疑問に思いながら足を退けて、踏んだ物を確かめる。
「えっ?」
それは使用済みのコンドームの袋だった。慌てて傍にあるゴミ箱を見たけど、中になにも入っていない。
「これって、どういうこと?」
頭の中へと渦巻くように、一気に血が巡っていく。動揺している心とは裏腹に、あるひとつの可能性を探るべく、寝室の隅々まで目を泳がせて、その形跡を探索した。
私の実家は今住んでいるマンションから、徒歩10分くらいのところにある。
悪阻で具合の悪い私の様子を心配した母親が時々顔を出してくれていたのだけれど、悪阻になってからまともに食べ物を口にしていないことや、そのせいで良平さんに迷惑をかけていることを理由に、実家で静養することになった。
「美羽、体調が良くなるまで、実家でしっかり体を休めるといい。それがおなかの子のためにもなる」
笑顔で送り出してくれた良平さんのお蔭で、気兼ねなく実家で養生することができた。
実家で生活してから2週間後、悪阻もだいぶ楽になり体調も以前に比べると、かなり安定した。近所くらいなら歩くことができるようになったので、久しぶりに自宅マンションに帰ってみる。
(この時期は決算期で職場は大忙しなのに、疲れて帰ってからの家事は大変だよね)
良平さんが独身のときの雑然とした部屋を思い出しながら、自宅の鍵を開けて中に入る。期間限定で独身でいる良平さんのひとりで暮らしだから、生活感あふれる荒れ放題のリビングを予想していたのにーー。
「あれ? すごく綺麗に片付いてる……」
悪阻でまともに掃除もできていなかったリビングが、まるでハウスキーパーを頼んだみたいに、とても綺麗になっていた。
(私が帰ってくることだって知らせていないのに、異様ともいえるこの綺麗さはいったい?)
そう思いながらキッチンや洗面所、浴室を見て回った。ゴミはコンビニの弁当を食べた容器があることで、自炊していないのが明白で、キッチンが綺麗な理由がわかったのだけれど。
「洗面所やお風呂場の排水溝、髪の毛が1本もないっていうのも、彼らしくない……」
そう考えているうちに、実家に帰っている最中は、例のメッセージが一通も送られていないことに気づいた。
妙な胸騒ぎを抱えながら、寝室の扉を開ける。ベッドの上も綺麗に布団が敷かれたままで、良平さんが使ったあとがまったく感じられなかった。
(ものを食べた形跡があるんだから、ここに帰ってきてるハズなのに、もしかしてソファで寝ているのかな?)
顎に手を当てながら、ベッドの脇でそんなことを考えたときに、スリッパを履いた足がなにかを踏みつけた。なんだろうと疑問に思いながら足を退けて、踏んだ物を確かめる。
「えっ?」
それは使用済みのコンドームの袋だった。慌てて傍にあるゴミ箱を見たけど、中になにも入っていない。
「これって、どういうこと?」
頭の中へと渦巻くように、一気に血が巡っていく。動揺している心とは裏腹に、あるひとつの可能性を探るべく、寝室の隅々まで目を泳がせて、その形跡を探索した。