憎きセカンドレディに鉄槌を!(コミカライズ原作『サレ妻と欲しがり女』)
「ちょっと、そんなことされたら探せなくなる」

「久しぶりに俺に触れられて、美羽は嬉しい?」

(――良平さんが浮気してなかったら、素直に喜んでたのにな)

「私が今、なにをしてるのかわかって、それを言ってる?」

「徹底的に調べていいよ。その代わり俺は俺で、勝手に準備を進めておくから」

 妙に余裕たっぷりな様子でいるものだから、自然と悟ってしまった。このスマホには、浮気相手の情報がないことを。だからといって、コッソリ二台目のスマホを持ち歩いてる様子もないし、どんなトリックで私のチェックを逃れたんだろうか――。

 気落ちしながらメッセージアプリをタップし、同じ作業をはじめたら、良平さんは私が着てるシャツのボタンを手際よく外す。

「ずっと美羽に触れたかった」

 ブラトップの裾から良平さんの手が忍び込み、腰骨から指を這わせ、胸に触れながら、ぎゅっと抱きついた。

「俺だけの美羽……」

「良平さん――」

「とっととチェックし終えてくれ。俺がどれだけ我慢してるか、おまえはわからないだろ。好きな相手に触れられないつらさがわからないから、平然としていられるんだ!」

「それは……悪いと思ってる」

「反省してるように見えないぞ、誠意を示せよ」

 言うなり私が手にしてる良平さんのスマホを取り上げ、テーブルに放り投げた。そして私の首を片手で掴み、そのまま立ち上がらせる。

「ちょっと良平さんっ、苦しぃ」

 首を掴んでるだけで絞めてはいないものの、こんなことをされる覚えはない。私は良平さんの手首を掴んで、外そうと試みる。

「抵抗するな。早く移動しろ」

 そう言って彼が私を連れた場所は、寝室だった。スマホのように放り投げられることをせずに、人形を座らせるように私をベッドに腰かけさせる。

 首から手を離した良平さんは、私を見下ろしながら、ジャケットを脱いでネクタイを外し、足元にそれらを置いていく。

「私、良平さんとシたくない」

「妊娠中なんだから、それなりの配慮をしてやるって」

「だって良平さん、浮気してるじゃない!」

 感情を込めた私のひとことに、ワイシャツのボタンを外す良平さんの手の動きが、ピタリと止まった。

「その証拠はどこにある? さっきスマホを見ても、なーんもなかっただろ」

 目の前にある面持ちはマネキンのような無表情で、なにを考えているのかまったくわからない。

「実家から一旦帰ってきた日、この部屋に使用済みのコンドームが床に落ちてたし、枕には長い髪が落ちてた……」

 両手を握りしめながら、ずっと言いたかったことを強い口調で告げた私を、良平さんはまじまじと見つめる。目が嫌な光り方をした瞬間、片方の唇の端がつりあがり、私に向かってほほ笑みかけた。
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