憎きセカンドレディに鉄槌を!(コミカライズ原作『サレ妻と欲しがり女』)
「学くん、いたわってくれてありがとね」

「体が大変なんだから、メンタルだって不安定になるよな。そのせいで旦那さんとケンカしたとか?」

 本当は学くんに、余計な心配をさせたくなかった。しかしながらここで気を遣ったりすれば、幼なじみゆえに、誤魔化したことが即バレするだろう。

「あのね、学くんが玄関先で言ったこと。現実を目の前に突きつけられて、あのときは返事ができなかったんだ」

「それってマジなのか? なにかの間違いじゃないのかよ!」

 驚きのあまりに、一瞬呆けた学くん。胸の前に組んでいた両腕で、私の肩をやんわりと掴んで、体を軽く揺さぶった。

(昨日乱暴だった良平さんとは大違い――)

「間違いであってほしかったけど、寝室の床には使用済みの避妊具の袋があったし、私のものじゃない長い髪の毛が枕に落ちてた」

「その決定的な証拠はどうした?」

 矢継ぎ早の質問に、声のトーンを落として答える。

「ショックで捨てちゃった……」

 私の言葉を聞いた瞬間、学くんは小さな舌打ちをした。

「くそっ、もったいないな。なにかのときには、しっかりした証拠になるのに」

「なにかのときって?」

 首を傾げる私に、学くんは人差し指を立てて、わかりやすくレクチャーする。

「離婚や裁判で相手を訴えるのに、それらは浮気してる証拠品になるだろ。ちなみに相手の女はどんなヤツ?」

「わからない。証拠品がないまま良平さんに食ってかかったんだけど、浮気してないの一点張りで、うまく誤魔化されちゃった」

「だったら簡単。証拠品がなければ、これから集めればいいだけだ」

 さっきよりも明るい声で返事をしてくれたことで、私の気持ちが幾分軽くなる。

「証拠を集めることができるの?」

「ここで確認。美羽姉はどうしたい?」

「どうしたい、なんて……」

 この先どうしたいなんて、まったく考えていなかった。良平さんに浮気されたという事実と、すっかり変わってしまった性格を受け止められなくて、ただただ逃げるだけしかしていない。

「旦那さんは浮気しているのに、美羽姉に誤魔化した。ということは、今後も浮気を続けると思う」

「…………」

「そんな旦那さんと、これからもずっと一緒にやっていけるのか?」
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