憎きセカンドレディに鉄槌を!(コミカライズ原作『サレ妻と欲しがり女』)
学くんのセリフが、痛いくらいに胸に突き刺さる。痛んでるのは胸なのに、自然とお腹に手を当ててしまった。
(大好きな人と結ばれた愛の証をこの身に宿しているハズなのに、妊娠を知ったときのような喜びがどんどん感じられなくなってる)
「美羽姉、大丈夫か?」
優しさに満ち溢れた学くんの問いかけが、暗く沈んでしまった私に勇気を与えた。顔をしっかりあげて、今の心情を伝えるように言の葉にのせる。
「産まれてくるコに父親がいなかったら、かわいそうだと思ってた。昨日までは――」
「昨日?」
涼しげな一重まぶたを何度も瞬かせながら、不思議そうに訊ねる学くんに、思いきって告げる。
(内容が内容だけに、重くならないように流す感じで喋らないと――)
「良平さんに性行為を求められて拒否したんだけど、無理やりされちゃった。その前に浮気してるしてないって口論して、ものすごく最悪な状況のあとなのにね」
愛想笑いを浮かべた私を見た学くんの表情は、不機嫌というより考えに沈んだ顔になっていた。昔はすぐに唇を尖らせて不貞腐れていたのに、知らない間に大人になっちゃったんだなと思わされた。
「……俺も男だから、好きな相手とヤりたい気持ちはわかる。だけど身重の奥さんの体のことを考えたら、そんなもん自分で発散すればいいだけのことじゃないか」
苛立ちまかせにボサボサの髪を掻き上げてから、その場に胡坐で座り込む。
「だけと良平さんは自分で発散しきれなくて、浮気に走ったみたい」
私の愛想笑いが次第に崩れていく。『浮気』という言葉を口にするたびに、自分の心をズタズタに傷つけていく気がした。
「クズじゃん、美羽姉の旦那さん」
「そうだね……」
「最低だろ。悪阻で苦しんでるのをわかっているのに、浮気するなんてさ。挙句の果てには誤魔化すとか、絶対にありえない」
(良平さんを罵れない私に変わって、学くんが代わりに文句を言っているみたい)
「あ~クソっ。おかしいだろ、こんなの。好きなヤツとの子どもができて結婚をして、幸せの絶頂期のハズなのに!」
胡座をかいた膝を何度も殴りつける学くんに、「ごめんね」と呟いた。
「美羽姉は謝ることない。悪いのは旦那さん」
「うん……」
「だけど立て続けに、こんなの信じられない。俺の推しに続き、美羽姉も浮気で人生を翻弄されるなんて」
「俺の推し?」
「ちょっと待ってて。今見せるから」
そう言ってジーンズのポケットからスマホを取り出し、画面に触れてなにかを表示するためにタップし続ける。
「これさ――」
(大好きな人と結ばれた愛の証をこの身に宿しているハズなのに、妊娠を知ったときのような喜びがどんどん感じられなくなってる)
「美羽姉、大丈夫か?」
優しさに満ち溢れた学くんの問いかけが、暗く沈んでしまった私に勇気を与えた。顔をしっかりあげて、今の心情を伝えるように言の葉にのせる。
「産まれてくるコに父親がいなかったら、かわいそうだと思ってた。昨日までは――」
「昨日?」
涼しげな一重まぶたを何度も瞬かせながら、不思議そうに訊ねる学くんに、思いきって告げる。
(内容が内容だけに、重くならないように流す感じで喋らないと――)
「良平さんに性行為を求められて拒否したんだけど、無理やりされちゃった。その前に浮気してるしてないって口論して、ものすごく最悪な状況のあとなのにね」
愛想笑いを浮かべた私を見た学くんの表情は、不機嫌というより考えに沈んだ顔になっていた。昔はすぐに唇を尖らせて不貞腐れていたのに、知らない間に大人になっちゃったんだなと思わされた。
「……俺も男だから、好きな相手とヤりたい気持ちはわかる。だけど身重の奥さんの体のことを考えたら、そんなもん自分で発散すればいいだけのことじゃないか」
苛立ちまかせにボサボサの髪を掻き上げてから、その場に胡坐で座り込む。
「だけと良平さんは自分で発散しきれなくて、浮気に走ったみたい」
私の愛想笑いが次第に崩れていく。『浮気』という言葉を口にするたびに、自分の心をズタズタに傷つけていく気がした。
「クズじゃん、美羽姉の旦那さん」
「そうだね……」
「最低だろ。悪阻で苦しんでるのをわかっているのに、浮気するなんてさ。挙句の果てには誤魔化すとか、絶対にありえない」
(良平さんを罵れない私に変わって、学くんが代わりに文句を言っているみたい)
「あ~クソっ。おかしいだろ、こんなの。好きなヤツとの子どもができて結婚をして、幸せの絶頂期のハズなのに!」
胡座をかいた膝を何度も殴りつける学くんに、「ごめんね」と呟いた。
「美羽姉は謝ることない。悪いのは旦那さん」
「うん……」
「だけど立て続けに、こんなの信じられない。俺の推しに続き、美羽姉も浮気で人生を翻弄されるなんて」
「俺の推し?」
「ちょっと待ってて。今見せるから」
そう言ってジーンズのポケットからスマホを取り出し、画面に触れてなにかを表示するためにタップし続ける。
「これさ――」