憎きセカンドレディに鉄槌を!(コミカライズ原作『サレ妻と欲しがり女』)
「美羽姉がそれらを用意して、取りつけることができなかった理由。ひとえに、旦那さんを愛してるからなんだよな」

「…………」

「物的証拠品を自分の目で見ても愛してるって想いが、旦那さんを信じたいって気持ちに変換された。……感じかなぁ」

 学くんの口から(愛してる)という言葉を聞いたからこそ、現在進行形で同じなのか照らし合わせてみる。

「良平さんのこと。うん、浮気してる人なのに、愛してるかも――」

 浮気してるだけじゃない。昨夜は私に酷い言葉を延々と投げつけた。彼の持っている優しさの欠片なんて微塵もなく、ただヤりたいだけの男に成り下がっていた。

 しかも浮気してることを堂々と誤魔化して、私のことを騙してる。

『愛してる』と言った私のセリフを聞き、学くんはしょんぼりと肩を落としながら、ぽつりと呟く。

「浮気されてるのに好きとか、ある意味すごいとしか言えない。それって傍から見たらバカなことだと後ろ指を差されるかもだけど、俺としてはそこまで誰かを深く愛することができるのは、すごく羨ましいなって思うわ」

 やるせなさそうな学くんの面持ちは、もしかしたら私も同じ表情になっているのかな。

「ホント、バカみたいだよね……」

 言い知れぬ悲しみが涙になって、瞳から零れ落ちそうになったけど、必死に我慢する。幼なじみの学くんの前では、いいお姉さんであり続けたかったから。情けなくて弱い私を見せたくない。

 素早く服の袖で涙を拭い、嗚咽を堪えるためにを奥歯をぎゅっとかみ殺す。

「美羽姉はバカじゃない。俺は褒めただろ」

「学くん……」

「それに俺は美羽姉が、自分で調べなくてよかったって思ってるんだ。道具を揃えるにしろ、それを取りつけることも、絶対におなかのコによくないって」

 言いながら立ち上がり、持っていたスマホをしまうなり、ふたたびジーパンのポケットに手をやる彼を黙ったまま見上げた。

「ただでさえ美羽姉は悪阻で具合悪くしてるだけじゃなく、旦那さんに浮気されてボロボロなところに、自らダメージを食らうことをしなくていいと思うんだ。胎教だっけ? いつからはじめるのか知らないけど、大事なことだろ?」

「良平さんよりもよく知ってるね。学くんが旦那さんなら私も安心して、妊婦ライフを送れるのにな」

 笑いながら言った私とは対照的に、学くんは手にカードケースを持った状態で固まる。痛いところに触れられたような沈んだ顔をしているため、非常に声をかけづらい。
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