憎きセカンドレディに鉄槌を!(コミカライズ原作『サレ妻と欲しがり女』)
写真を送ったあとに、良平さんのプロフィールをぽちぽち打ち込もうとしたときだった。
「美羽姉の男の趣味、昔っから相変わらずだよな」
「なに、それってどういうこと?」
送った写真を見ながら突っかかる学くんの物言いに、思わず反発するような口調で返してしまった。
「簡単に言うと男らしくて、仕事できますっていう自信を前面に醸してるっていう感じ。美羽姉が好きになる相手って、目鼻立ちがハッキリしてる顔のつくりで、見るからに頼りがいがあって、がっしりした体格の男ばかりだろ。だから思い出しちゃった」
学くんは嫌な感じでニヤニヤする。思い出したというセリフに、顔を歪ませるしかない。
「美羽姉が中学生のとき、俺をダシに使って教育実習に来てた大学生に、無謀にもアタックしたこと」
「なっ!? そんな昔のこと、言い出さなくてもいいでしょ!」
「しょうがないじゃん。旦那さん、そのときの教育実習生に、どことなく似てたんだからさ。美羽姉の儚く散った初恋の甘酸っぱさは、お駄賃で貰ったお菓子の美味しさで、俺としては存分に味わったけどな」
(んもう、なんでそんな黒歴史を思い出すのよ……)
複雑な心境を抱えながら、良平さんのプロフィールや学くんが知りたいであろう情報をしっかり打ち込み、タップして送信した。
送った情報を読みつつ顎に手を当てて考え込む学くんが、上目遣いで私を見る。
「俺も仕事してるから、合間をみて調査することになるけど、依頼料は三万でいいよ」
「それって安すぎない?」
探偵事務所などに浮気調査を依頼したとき、事務所の違いがあれど、浮気をしているかどうかの事実確認の調査だけで約10~20万円ほどかかる。しかもここから、裁判でも通じるような確かな証拠を押さえるための調査だった場合、30~70万円程度出費しなければならないことがわかっていた。
「さっき言ったろ。編集部からたんまりお金をもらって懐があたたかいし、幼なじみ価格っていうことで」
「でも……」
「それに俺は、探偵みたいにプロじゃない。ただのフリーカメラマン。調べられることに限りがある。それを含めての依頼料の価格だからさ」
見惚れてしまいそうになる満面の笑みを浮かべた学くんに、これ以上無理を言うことができなくなった。
「そう、ありがとう。助かる……」
「さっそく依頼に着手するけど、美羽姉はここでしっかり体を休ませろ。旦那さんのいる家には、絶対に帰るなよ」
「頼まれても、マンションには帰らない。今は無理」
「安心した。じゃあな! わざわざ見送らなくていいから」
慌ただしく部屋から出て行く大きな背中を、安堵した気持ちで見つめる。出逢ったときは小学一年生の小さな男の子だったのに、今は誰よりも頼もしい幼なじみの姿に和んだお蔭で、荒んでいた私の心が救われたのだった。
「美羽姉の男の趣味、昔っから相変わらずだよな」
「なに、それってどういうこと?」
送った写真を見ながら突っかかる学くんの物言いに、思わず反発するような口調で返してしまった。
「簡単に言うと男らしくて、仕事できますっていう自信を前面に醸してるっていう感じ。美羽姉が好きになる相手って、目鼻立ちがハッキリしてる顔のつくりで、見るからに頼りがいがあって、がっしりした体格の男ばかりだろ。だから思い出しちゃった」
学くんは嫌な感じでニヤニヤする。思い出したというセリフに、顔を歪ませるしかない。
「美羽姉が中学生のとき、俺をダシに使って教育実習に来てた大学生に、無謀にもアタックしたこと」
「なっ!? そんな昔のこと、言い出さなくてもいいでしょ!」
「しょうがないじゃん。旦那さん、そのときの教育実習生に、どことなく似てたんだからさ。美羽姉の儚く散った初恋の甘酸っぱさは、お駄賃で貰ったお菓子の美味しさで、俺としては存分に味わったけどな」
(んもう、なんでそんな黒歴史を思い出すのよ……)
複雑な心境を抱えながら、良平さんのプロフィールや学くんが知りたいであろう情報をしっかり打ち込み、タップして送信した。
送った情報を読みつつ顎に手を当てて考え込む学くんが、上目遣いで私を見る。
「俺も仕事してるから、合間をみて調査することになるけど、依頼料は三万でいいよ」
「それって安すぎない?」
探偵事務所などに浮気調査を依頼したとき、事務所の違いがあれど、浮気をしているかどうかの事実確認の調査だけで約10~20万円ほどかかる。しかもここから、裁判でも通じるような確かな証拠を押さえるための調査だった場合、30~70万円程度出費しなければならないことがわかっていた。
「さっき言ったろ。編集部からたんまりお金をもらって懐があたたかいし、幼なじみ価格っていうことで」
「でも……」
「それに俺は、探偵みたいにプロじゃない。ただのフリーカメラマン。調べられることに限りがある。それを含めての依頼料の価格だからさ」
見惚れてしまいそうになる満面の笑みを浮かべた学くんに、これ以上無理を言うことができなくなった。
「そう、ありがとう。助かる……」
「さっそく依頼に着手するけど、美羽姉はここでしっかり体を休ませろ。旦那さんのいる家には、絶対に帰るなよ」
「頼まれても、マンションには帰らない。今は無理」
「安心した。じゃあな! わざわざ見送らなくていいから」
慌ただしく部屋から出て行く大きな背中を、安堵した気持ちで見つめる。出逢ったときは小学一年生の小さな男の子だったのに、今は誰よりも頼もしい幼なじみの姿に和んだお蔭で、荒んでいた私の心が救われたのだった。