憎きセカンドレディに鉄槌を!(コミカライズ原作『サレ妻と欲しがり女』)
「あれだけ酷いことをしておいて、頭を下げたら、昨日の行為が許されると思ってるの? そんな都合のいいことがあるわけないでしょ。バカじゃない!」
私が告げた良平さんを全力で非難する言葉に、お母さんが気を遣って背後から声をかける。
「美羽、良平さんだって謝ってるんだし、もうそれくらいにしてあげたら……」
「お母さんは黙ってて。これは私たち夫婦の問題なの」
お母さんには申し訳ないと思いながらも、ぴしゃりと言い放った。
「美羽、どうしたら許してくれるんだ?」
「ラインにも書いたけど、しばらく顔を見たくない。こんなメンタルのままじゃ、おなかのコに悪影響を与える」
「そうだな、大事にしなきゃいけないときなのに」
「大事にしなきゃいけないときだってわかってるのに、あんなことして! 私がどれだけ傷ついたかわかる?」
玄関に虚しく響く自分の声に、思わず泣きそうになった。でもここで泣いたりしたら、言いたいことが言えなくなる。負の感情に揺らぎそうになる気持ちに喝を入れて、目の前にいる良平さんに視線を縫い付けた。
私に見つめられた良平さんは、やや迷惑げな表情で口を開く。
「だからこうして謝ってるじゃないか」
「謝ればいいってもんじゃない。それに良平さんが絶対にしないという保障だって、どこにもないでしょ。違う?」
「それは――」
ド正論をぶつけた私のセリフに、良平さんがうっと押し黙った。決まり悪そうな顔を凝視しながら、さらに追い打ちをかける。
「なんなら誓約書でも作ろうか。『美羽に対して罵る言葉を今後一切使いません。同意のない性行為もしません』っていうのを、一筆書いてもらうことになるけど」
「良平さん、美羽の言ったことは本当なの?」
お母さんが慌てて私の隣に並び、良平さんに問いかけた。
「えっと、なんていうか、ちょっとした行き違いみたいな感じがありまして」
あからさまにおどおどしながら、視線をあちこちに彷徨わせる良平さん。昨日の態度とはえらい違いだった。
「行き違いがなんなのかはわかりませんけど、美羽は妊娠初期で悪阻も酷く、体だって万全じゃありません。そんなコに向かって酷い言葉を使ったり、性行為を無理強いする時点でおかしいじゃないですか!」
私以上に、お母さんの剣幕のほうがすごかった。同じ女性として、心強い味方だ。
「そのことについては、俺としても反省しています。会社でのストレスが溜まっていたとはいえ、美羽に絶対にしてはいけないことでした」
「美羽の言うとおり、しばらく実家で過ごしてもらいます。わざわざ来てくれて申し訳ないけど、帰ってもらえるかしら」
私が言う前に、お母さんが良平さんをさっさと追い払ってくれたので、楽できてしまった。
「わかりました。今日のところは、このまま失礼します」
俯いたまま肩を落として帰る良平さんに、誰も声をかけなかった。
(お母さんと私にコテンパンにやられた良平さんは、間違いなく浮気相手に逢いに行って、慰めてもらうに違いない)
私が告げた良平さんを全力で非難する言葉に、お母さんが気を遣って背後から声をかける。
「美羽、良平さんだって謝ってるんだし、もうそれくらいにしてあげたら……」
「お母さんは黙ってて。これは私たち夫婦の問題なの」
お母さんには申し訳ないと思いながらも、ぴしゃりと言い放った。
「美羽、どうしたら許してくれるんだ?」
「ラインにも書いたけど、しばらく顔を見たくない。こんなメンタルのままじゃ、おなかのコに悪影響を与える」
「そうだな、大事にしなきゃいけないときなのに」
「大事にしなきゃいけないときだってわかってるのに、あんなことして! 私がどれだけ傷ついたかわかる?」
玄関に虚しく響く自分の声に、思わず泣きそうになった。でもここで泣いたりしたら、言いたいことが言えなくなる。負の感情に揺らぎそうになる気持ちに喝を入れて、目の前にいる良平さんに視線を縫い付けた。
私に見つめられた良平さんは、やや迷惑げな表情で口を開く。
「だからこうして謝ってるじゃないか」
「謝ればいいってもんじゃない。それに良平さんが絶対にしないという保障だって、どこにもないでしょ。違う?」
「それは――」
ド正論をぶつけた私のセリフに、良平さんがうっと押し黙った。決まり悪そうな顔を凝視しながら、さらに追い打ちをかける。
「なんなら誓約書でも作ろうか。『美羽に対して罵る言葉を今後一切使いません。同意のない性行為もしません』っていうのを、一筆書いてもらうことになるけど」
「良平さん、美羽の言ったことは本当なの?」
お母さんが慌てて私の隣に並び、良平さんに問いかけた。
「えっと、なんていうか、ちょっとした行き違いみたいな感じがありまして」
あからさまにおどおどしながら、視線をあちこちに彷徨わせる良平さん。昨日の態度とはえらい違いだった。
「行き違いがなんなのかはわかりませんけど、美羽は妊娠初期で悪阻も酷く、体だって万全じゃありません。そんなコに向かって酷い言葉を使ったり、性行為を無理強いする時点でおかしいじゃないですか!」
私以上に、お母さんの剣幕のほうがすごかった。同じ女性として、心強い味方だ。
「そのことについては、俺としても反省しています。会社でのストレスが溜まっていたとはいえ、美羽に絶対にしてはいけないことでした」
「美羽の言うとおり、しばらく実家で過ごしてもらいます。わざわざ来てくれて申し訳ないけど、帰ってもらえるかしら」
私が言う前に、お母さんが良平さんをさっさと追い払ってくれたので、楽できてしまった。
「わかりました。今日のところは、このまま失礼します」
俯いたまま肩を落として帰る良平さんに、誰も声をかけなかった。
(お母さんと私にコテンパンにやられた良平さんは、間違いなく浮気相手に逢いに行って、慰めてもらうに違いない)