憎きセカンドレディに鉄槌を!(コミカライズ原作『サレ妻と欲しがり女』)
「そのノートは、美羽姉がどうすればよかったのかを書き記していたヤツ」
「うん。学くんに調査を再依頼したあとも、これにいっぱい書いたんだ。心に大きな穴が空いたままだったから、気づいたことがあったの」
閉じてる無機質なノートの表紙に、右手でそっと撫でた。私の手が冷たいせいか、まるで金属の表面に触れている感触を覚える。
「あのコは、この痛みを知ってるって」
「この痛み?」
目を瞬かせながら首を傾げた学くんにわかるように、言葉を選びつつ説明する。
「大切な人が奪われる悲しみや、裏切られる苦しさを知っているんじゃないかって。それがとてもつらいことを身をもって知っているから、平然と人を傷つけることができる……」
「それを知っているならなおのこと、普通なら避けてやるべき行為なのにな」
「それが人としての思いやりよね」
笑いながら私が告げた途端に、目の前にある顔が微妙な面持ちに変化した。
「美羽姉、なにを考えているんだ……」
目を見開いて私の様子を窺う感じは、さながら化け物でも見たかのような顔だった。
(いったい私は、どんな顔をしているんだろう。学くんがこんな表情をしているということは、笑ったハズなのに相当酷い顔をしているのかな)
そんなことを考えながらローテーブルに視線を落として、ゆったりと口を開く。
「このノートには、過去のことを思い返したことと一緒に、これからどうしていくかも書き加えたの」
表紙に置いていた右手を退けて、反対の手でノートをぱらぱら捲った。
びっしり書き込まれたそれは、最後のページまで使っていなかったものの、捲っているだけで、これからおこなうことの陰湿な黒さを示しているみたいだった。
「学くんがインスタを大きくプリントアウトしてくれたおかげで、良平さんに対して制裁する方法が見つかったんだよ」
「そうか、あれが役に立ったならよかった」
「だけどあのコには、そんなことよりももっともっと苦しい目に遭わさないと、私の気が済まない……」
「美羽姉、いったいなにをしようと考えてるんだ?」
「正攻法じゃダメなの、わかって学くん」
100%理解してもらえない悪いことをこれからしようとする私を見て、間違いなく嫌いになるだろうな。昔から私のことを慕ってくれる彼がそんな気持ちになるのは、とても寂しいことだけど。
「美羽姉、正攻法じゃないって、なんだよそれ……」
私は俯き、一旦息をすべて吐ききってから、しっかり顔をあげて学くんを見据える。誤魔化しを許さないまっすぐな視線とぶつかった。
「裏サイトでね、高額のお金を払ったら、恨みを晴らしてくれる集団がいるんだって」
「それは反社がやってるって噂の、ヤバすぎるサイドビジネス……。そんな危ないものに手を出そうとしてるのかよ!」
芸能関係だけじゃなく、裏の世界のことも熟知している彼が、らしくないくらいに尖り声をあげた。それは当然の反応だと思う。
「うん。学くんに調査を再依頼したあとも、これにいっぱい書いたんだ。心に大きな穴が空いたままだったから、気づいたことがあったの」
閉じてる無機質なノートの表紙に、右手でそっと撫でた。私の手が冷たいせいか、まるで金属の表面に触れている感触を覚える。
「あのコは、この痛みを知ってるって」
「この痛み?」
目を瞬かせながら首を傾げた学くんにわかるように、言葉を選びつつ説明する。
「大切な人が奪われる悲しみや、裏切られる苦しさを知っているんじゃないかって。それがとてもつらいことを身をもって知っているから、平然と人を傷つけることができる……」
「それを知っているならなおのこと、普通なら避けてやるべき行為なのにな」
「それが人としての思いやりよね」
笑いながら私が告げた途端に、目の前にある顔が微妙な面持ちに変化した。
「美羽姉、なにを考えているんだ……」
目を見開いて私の様子を窺う感じは、さながら化け物でも見たかのような顔だった。
(いったい私は、どんな顔をしているんだろう。学くんがこんな表情をしているということは、笑ったハズなのに相当酷い顔をしているのかな)
そんなことを考えながらローテーブルに視線を落として、ゆったりと口を開く。
「このノートには、過去のことを思い返したことと一緒に、これからどうしていくかも書き加えたの」
表紙に置いていた右手を退けて、反対の手でノートをぱらぱら捲った。
びっしり書き込まれたそれは、最後のページまで使っていなかったものの、捲っているだけで、これからおこなうことの陰湿な黒さを示しているみたいだった。
「学くんがインスタを大きくプリントアウトしてくれたおかげで、良平さんに対して制裁する方法が見つかったんだよ」
「そうか、あれが役に立ったならよかった」
「だけどあのコには、そんなことよりももっともっと苦しい目に遭わさないと、私の気が済まない……」
「美羽姉、いったいなにをしようと考えてるんだ?」
「正攻法じゃダメなの、わかって学くん」
100%理解してもらえない悪いことをこれからしようとする私を見て、間違いなく嫌いになるだろうな。昔から私のことを慕ってくれる彼がそんな気持ちになるのは、とても寂しいことだけど。
「美羽姉、正攻法じゃないって、なんだよそれ……」
私は俯き、一旦息をすべて吐ききってから、しっかり顔をあげて学くんを見据える。誤魔化しを許さないまっすぐな視線とぶつかった。
「裏サイトでね、高額のお金を払ったら、恨みを晴らしてくれる集団がいるんだって」
「それは反社がやってるって噂の、ヤバすぎるサイドビジネス……。そんな危ないものに手を出そうとしてるのかよ!」
芸能関係だけじゃなく、裏の世界のことも熟知している彼が、らしくないくらいに尖り声をあげた。それは当然の反応だと思う。