憎きセカンドレディに鉄槌を!(コミカライズ原作『サレ妻と欲しがり女』)
「白鳥らしい答えだな。ちなみに俺は腕枕派。そして写真に写ってる、この男はどうだ?」
ふたたび俺のスマホを手に取り、画面に指を差す。
「あ――」
「こういうのって、心の距離感が表れるんだよなぁ」
少しだけボヤけているが、大きな男の背中がそこに映っていた。アバズレの体を散々弄んで疲れて寝てしまった男と、彼氏と一緒で幸せアピールをしている彼女と背中合わせになった写真は、確かに哀れかもしれない。
「倦怠期のカップルや熟年夫婦ならいざ知らず、『今夜も彼をひとりじめ♡』なんてコメントしてる女の虚しさ。必死な感じが漂っていて笑える」
「そうですね……」
(この写真一枚で、いろんな事実を導き出す一ノ瀬さんは、やっぱりすごい人だ)
「胸はFカップ以上ありそうだな。二の腕を隠すデザインの服を着ていて、このポーズをとるということは、ウィークポイントは太い二の腕ってことか?」
写真を見ただけで、相手の容姿をどんどん暴いていく一ノ瀬さんの観察眼に、恐れおののくしかない。
「どれどれ、ほかの写真を見ても腕を胸の下に隠したり、背中に隠しているということは、間違いなく二の腕が太いんだろうなぁ。それを気にさせないように抱く体位は――」
顎に手を当てながら、あれこれ妄想をはじめた一ノ瀬さんに、なんて声をかけたらいいのか。
(副編集長が言ってたシコってるって意味は、こういうことだったのか。修正しながら毎回こんなことを考えてるなんて、本当にこの人はいろんな意味ですごい……)
「はい、次!」
「あ、元旦那さんの写真ですね?」
「ヤローの写真なんか見たくない。白鳥が恋してやまない、幼なじみの写真を拝ませてくれ」
「絶対に嫌です! 見せたくありません」
美羽姉の写真を見せたら、さっきみたいに体を透けさせながら、卑猥なことを言い出すに違いない。
「なんだよ、ケチくさいないなぁ。写真くらいいいだろ、減るもんじゃあるまいし」
「そんなことよりも、この女を落とす方法を教えてください!」
一ノ瀬さんの手からスマホを奪取し、アバズレの写真を叩きながらお願いした。
「教えてやってもいいけどさ、俺にも一応ポリシーってものがあるんだ」
「ポリシー?」
「そう。未成年と人妻には手を出さない」
エッヘンと偉そうに胸を張りながら告げられたセリフは、俺を十二分に白けさせた。しかしながら、このままおめおめと引くわけにはいかない。俺がやらなかったら、美羽姉が裏サイトに頼んでしまう。
「一ノ瀬さんにポリシーがあっても、俺はこの女をどうにかしなきゃいけないんです!」
髪型を変えて服も買ってもらい、俺自身の準備ができてる以上、あとはアバズレを落とすだけ。
「白鳥がそんなにヤりたいのなら、方法くらい伝授してやるけどさ」
「一ノ瀬さんのヤる意味と、俺の考えるやる意味が違うことを理解してほしいです!」
「わかってるって。人妻には手を出さないが、この女は別枠ということにしてやる。男はみんな自分になびくと思ってる、傲慢さを鼻にかけた哀れな女に、痛い目をみてもらうことにしようか。あのな――」
一ノ瀬さんの口から詳細に語られる作戦は、俺が考えもしないことだった。卑猥なことやエロワードを連呼していた人とは思えない、クリーンなその作戦を実行して、本当にうまくいくのか、不安が胸の中に渦巻いていく。
「白鳥のその顔。そんなんで本当にうまくいくとは思えない表情だな」
「だってそうでしょう、信じられませんって」
「百発百中の外したことのない、俺のワザだぞ。だったら試しに、本人に逢ったときに言ってやれ。『二の腕が太い人はちょっと』ってな。イケメンに自分のウィークポイントを突っつかれて、ショックを受けた女が次にとる行動はひとつしかない」
こうして事細かにアドバイスを受けた俺は、実家からアバズレたちが住むマンションの近くに引越しするために、急いで準備に勤しみたかったのだが、その前に難関な敵を相手にすることになる。
ふたたび俺のスマホを手に取り、画面に指を差す。
「あ――」
「こういうのって、心の距離感が表れるんだよなぁ」
少しだけボヤけているが、大きな男の背中がそこに映っていた。アバズレの体を散々弄んで疲れて寝てしまった男と、彼氏と一緒で幸せアピールをしている彼女と背中合わせになった写真は、確かに哀れかもしれない。
「倦怠期のカップルや熟年夫婦ならいざ知らず、『今夜も彼をひとりじめ♡』なんてコメントしてる女の虚しさ。必死な感じが漂っていて笑える」
「そうですね……」
(この写真一枚で、いろんな事実を導き出す一ノ瀬さんは、やっぱりすごい人だ)
「胸はFカップ以上ありそうだな。二の腕を隠すデザインの服を着ていて、このポーズをとるということは、ウィークポイントは太い二の腕ってことか?」
写真を見ただけで、相手の容姿をどんどん暴いていく一ノ瀬さんの観察眼に、恐れおののくしかない。
「どれどれ、ほかの写真を見ても腕を胸の下に隠したり、背中に隠しているということは、間違いなく二の腕が太いんだろうなぁ。それを気にさせないように抱く体位は――」
顎に手を当てながら、あれこれ妄想をはじめた一ノ瀬さんに、なんて声をかけたらいいのか。
(副編集長が言ってたシコってるって意味は、こういうことだったのか。修正しながら毎回こんなことを考えてるなんて、本当にこの人はいろんな意味ですごい……)
「はい、次!」
「あ、元旦那さんの写真ですね?」
「ヤローの写真なんか見たくない。白鳥が恋してやまない、幼なじみの写真を拝ませてくれ」
「絶対に嫌です! 見せたくありません」
美羽姉の写真を見せたら、さっきみたいに体を透けさせながら、卑猥なことを言い出すに違いない。
「なんだよ、ケチくさいないなぁ。写真くらいいいだろ、減るもんじゃあるまいし」
「そんなことよりも、この女を落とす方法を教えてください!」
一ノ瀬さんの手からスマホを奪取し、アバズレの写真を叩きながらお願いした。
「教えてやってもいいけどさ、俺にも一応ポリシーってものがあるんだ」
「ポリシー?」
「そう。未成年と人妻には手を出さない」
エッヘンと偉そうに胸を張りながら告げられたセリフは、俺を十二分に白けさせた。しかしながら、このままおめおめと引くわけにはいかない。俺がやらなかったら、美羽姉が裏サイトに頼んでしまう。
「一ノ瀬さんにポリシーがあっても、俺はこの女をどうにかしなきゃいけないんです!」
髪型を変えて服も買ってもらい、俺自身の準備ができてる以上、あとはアバズレを落とすだけ。
「白鳥がそんなにヤりたいのなら、方法くらい伝授してやるけどさ」
「一ノ瀬さんのヤる意味と、俺の考えるやる意味が違うことを理解してほしいです!」
「わかってるって。人妻には手を出さないが、この女は別枠ということにしてやる。男はみんな自分になびくと思ってる、傲慢さを鼻にかけた哀れな女に、痛い目をみてもらうことにしようか。あのな――」
一ノ瀬さんの口から詳細に語られる作戦は、俺が考えもしないことだった。卑猥なことやエロワードを連呼していた人とは思えない、クリーンなその作戦を実行して、本当にうまくいくのか、不安が胸の中に渦巻いていく。
「白鳥のその顔。そんなんで本当にうまくいくとは思えない表情だな」
「だってそうでしょう、信じられませんって」
「百発百中の外したことのない、俺のワザだぞ。だったら試しに、本人に逢ったときに言ってやれ。『二の腕が太い人はちょっと』ってな。イケメンに自分のウィークポイントを突っつかれて、ショックを受けた女が次にとる行動はひとつしかない」
こうして事細かにアドバイスを受けた俺は、実家からアバズレたちが住むマンションの近くに引越しするために、急いで準備に勤しみたかったのだが、その前に難関な敵を相手にすることになる。