憎きセカンドレディに鉄槌を!(コミカライズ原作『サレ妻と欲しがり女』)
鉄槌
***
学くんの準備が整っていく一方で、私は良平さんの不正を会社に訴えるために、あのコのインスタを徹底的にチェックし、淡々と書類をまとめた。
悪阻で苦しむ私を尻目に、出張に出かけた良平さんが彼女と行動を共にしているのが、日々アップされていたの写真からわかった。まるで私に見つけてほしいように――。
営業の仕事が早く終わったのか、午後からテーマパークで仲良く楽しんでいる写真や、大きなベッドで一緒に寝そべっている写真があったり。
どれも良平さんの顔は写っていないけれど、昼間の写真は見覚えのあるスーツから、ベッドの写真については、左腕にある生まれつきの痣と、首の付け根のホクロが彼の証明になった。
私が実家に帰っているせいなのか、いつもは月一の出張が倍になっているのも気になった。しかも泊りがけの出張は宿泊代を浮かすために、ひとりでいくことが多い。
出張へ行くのにあのコと同伴しているなら、彼が宿泊代を払っているのだろうか――少しでもカッコいいところを見せつけようと、良平さんは見栄を張って、いろいろ奢っている可能性がある。
(良平さんのお小遣いはたかが知れてるのに、こんなに何回もデートができるわけないわ。主張先で何回お泊りしているのよ……)
日時と場所、なにをしたのかを詳細にパソコンに打ち込んでまとめていくうちに、キーボードを操る手が不意に止まる。
私が妊娠してから、良平さんにかまってあげなかったという寂しさを紛らわせるために、彼女と浮気をしたんじゃないかと思ったら、自分に非があるように思えてしまい、後悔が心の中を支配した。
「こんなことをしてまで良平さんを傷つけて、私の恨みが晴れるのかな……」
相手は大好きだった人――妊娠して結婚までした相手を、絶望の底まで突き落とすことは、正しいことなのかな。だってあのコのせいで、優しい良平さんが変わってしまった。諸悪の根源は春菜自身なのに。
『ひとりで頑張る俺を、どうして美羽は褒めてくれないんだ?』
私に褒めることを強請った影で、あのコと浮気をしていた。
『あはは、俺は清廉潔白だよ。美羽のために毎晩頑張って、必死に働いてただけなのにな』
白々しい嘘をついて、あのコを抱いた手で私を無理やり抱いた。妊娠初期で体調が悪いというのに、そんなの無視して酷いことを言いながら、泣きじゃくる私を抱いた良平さん。
『俺は浮気してない。心から愛する女は、この世で美羽ひとりだけだ』
彼が浮気をしていなければ、そして私がそのことを知らなければ、これを聞いたときは間違いなく嬉しく思っただろう。そして『私も同じ気持ちだよ』って告げたに違いない。
愛する人の腕に抱かれて、世界で一番幸せに感じることができたであろうその行為も、相手の行動によって180度に変わってしまうことを知った。愛は憎しみに変わり、今の私はただの醜い女になり果ててしまった。
学くんの準備が整っていく一方で、私は良平さんの不正を会社に訴えるために、あのコのインスタを徹底的にチェックし、淡々と書類をまとめた。
悪阻で苦しむ私を尻目に、出張に出かけた良平さんが彼女と行動を共にしているのが、日々アップされていたの写真からわかった。まるで私に見つけてほしいように――。
営業の仕事が早く終わったのか、午後からテーマパークで仲良く楽しんでいる写真や、大きなベッドで一緒に寝そべっている写真があったり。
どれも良平さんの顔は写っていないけれど、昼間の写真は見覚えのあるスーツから、ベッドの写真については、左腕にある生まれつきの痣と、首の付け根のホクロが彼の証明になった。
私が実家に帰っているせいなのか、いつもは月一の出張が倍になっているのも気になった。しかも泊りがけの出張は宿泊代を浮かすために、ひとりでいくことが多い。
出張へ行くのにあのコと同伴しているなら、彼が宿泊代を払っているのだろうか――少しでもカッコいいところを見せつけようと、良平さんは見栄を張って、いろいろ奢っている可能性がある。
(良平さんのお小遣いはたかが知れてるのに、こんなに何回もデートができるわけないわ。主張先で何回お泊りしているのよ……)
日時と場所、なにをしたのかを詳細にパソコンに打ち込んでまとめていくうちに、キーボードを操る手が不意に止まる。
私が妊娠してから、良平さんにかまってあげなかったという寂しさを紛らわせるために、彼女と浮気をしたんじゃないかと思ったら、自分に非があるように思えてしまい、後悔が心の中を支配した。
「こんなことをしてまで良平さんを傷つけて、私の恨みが晴れるのかな……」
相手は大好きだった人――妊娠して結婚までした相手を、絶望の底まで突き落とすことは、正しいことなのかな。だってあのコのせいで、優しい良平さんが変わってしまった。諸悪の根源は春菜自身なのに。
『ひとりで頑張る俺を、どうして美羽は褒めてくれないんだ?』
私に褒めることを強請った影で、あのコと浮気をしていた。
『あはは、俺は清廉潔白だよ。美羽のために毎晩頑張って、必死に働いてただけなのにな』
白々しい嘘をついて、あのコを抱いた手で私を無理やり抱いた。妊娠初期で体調が悪いというのに、そんなの無視して酷いことを言いながら、泣きじゃくる私を抱いた良平さん。
『俺は浮気してない。心から愛する女は、この世で美羽ひとりだけだ』
彼が浮気をしていなければ、そして私がそのことを知らなければ、これを聞いたときは間違いなく嬉しく思っただろう。そして『私も同じ気持ちだよ』って告げたに違いない。
愛する人の腕に抱かれて、世界で一番幸せに感じることができたであろうその行為も、相手の行動によって180度に変わってしまうことを知った。愛は憎しみに変わり、今の私はただの醜い女になり果ててしまった。