憎きセカンドレディに鉄槌を!(コミカライズ原作『サレ妻と欲しがり女』)
***

 昼休み、長谷川春菜からしかけられた誘惑に負けたことについて、空き会議室でひとり淋しく反省会をする。今以上の敗北は行為を終えた瞬間に、ベッドの上で激しく噛みしめた。

 やってしまった事の重大さとは真逆に、久しぶりの行為で体が満たされたことは事実。同じコトをしているハズなのに、美羽とはまったく違う抱き心地とオーバーなリアクションを目の当たりにして、言い知れぬ喜びを昨夜体感した。

『上條課長のご褒美なんだから、もっと好きにしていいんだよ』

『ああんっ、その触り方すごく好きぃ♡ 春菜またイっちゃうかも~』

『上條課長が明日も頑張れるように、春菜も感じさせてあげるね♡』

 結局ポトフを食わずに春菜を食ってしまい、何食わぬ顔で自宅に帰った。夜遅かったこともあり美羽が寝ていたことがわかった瞬間、どっと安堵した。行為の痕跡を消そうと、すぐにシャワーを浴びる。

 冷水を浴びてる最中、胸に渦巻く後悔とは裏腹に、体が気持ちよさを覚えてしまっているらしく、ふたたびシたくて堪らなくなった。

 春菜に指摘された通り、美羽の妊娠がわかってから、ここ1ヶ月はしていなかったし、仕事の忙しさも相まって、自分でヌくこともあまりやっていなかった。

 そんな体を持て余しているところに、たわわな胸を触らせることによって刺激されたら、誰だって手を出す。しかも昨夜は時間制限という枷がある中で行為が終わっているため、現在進行形で体の芯にじんわりと火がついたままだった。

「上條課長、お待たせしました!」

 部署から離れた空き会議室は、いつもより遠くのところにした。春菜は満面の笑みを浮かべて、俺の傍まで駆け寄ってくる。

「お弁当、どうぞ♡」

「ああ、ありがと……」

「それと昨日の命令、私ちゃんとやってますからね」

「命令?」

 弁当の包みを解きながら呟くと、春菜は隣に座り、わざわざ俺の顔を覗き込んで、むくれた顔を見せた。

「昨日ベッドで、上條課長の言うことをなんでも聞くよって私が言ったら『だったらノーパンで出勤』って、笑いながら命令したでしょ」

「そんなの、冗談に決まってるのに……」

 弁当の包みを解く手が不意に止まる。春菜のタイトスカートを捲って、今すぐ確認したくなった。

「物欲しそうな目で私を見てもダメ。先にお弁当を食べてよね。デザートはそれから!」

「そんなこと言って、本当は命令に背いてるんだろ?」

 つっけんどんな物言いをしてもなんのその。春菜は瞳を細めて、どこか嬉しそうに俺の顔を眺める。
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