憎きセカンドレディに鉄槌を!(コミカライズ原作『サレ妻と欲しがり女』)
***
パソコンのモニターに映し出される学くんの様子に、私はずっと釘付けだった。
「学くん、本当に演技が上手……」
迫力のあるセリフを学くんが告げるたびに、あのコがすごくたじろいでいるのがわかるため、それを見ているだけで手に汗を握る。
「そりゃあ俳優をやっていたんだから、板についてるんじゃないの?」
「俳優?」
驚きながら一ノ瀬さんを見たら、私の顔を見て何度も瞬きする。
「あれ、幼なじみちゃん知らなかったの?」
「モデルをしていたのは知っていましたけど、俳優なんて初耳です」
私の返事に、目の前で気難しそうな表情をしながら呟く。
「あ~、俳優してるなんて恥ずかしすぎて、どうしても言えなかったんだな、アイツ。テレビで自分を見られたときのことを想像して、口を割らなかったに違いない!」
カラカラ大きな声で笑った一ノ瀬さんは、スマホを取り出して、なにかを画面に表示するなり、それを見せてくれた。
「深夜枠の学園恋愛ドラマで、白鳥は主人公のライバル役を演じていたんだ。これはそのときの番宣で撮影されたものさ」
スマホの画面に表示されていたのは、今よりも幼さの残る学くんの笑顔だった。
「そのドラマの撮影に俺の知り合いがいて、当時の話を聞いたんだけどさ。歌って踊れる有名なアイドルを主人公に起用したせいで、金銭面をなんとかしなけりゃいけなくて、とにかく安く済ませるために、顔がいい白鳥にドラマの話がいったってワケ」
「歌って踊れるアイドルのライバル役ですもんね」
主人公に対抗できるレベルの相手じゃなきゃ、恋のライバルになれないのはわかりすぎる。
「そうそう。でもいざ蓋を開けてみたら、アイドルの演技が酷くて、何度もNG出していたんだって。その点、白鳥はモデルなのにスムーズに演技したせいで、アイドルにえらくひがまれて、目の仇にされたんだと」
「学くん、すごいですね」
もう一度スマホに視線を注ぐと、一ノ瀬さんがなぞなぞを出すように問いかける。
「どうして演技がうまいと思う?」
「わかりません……」
ずっと一緒にいる学くんの演技のうまさが、どこからきているものなのか全然わからなかったので、即答してしまった。
「幼なじみちゃんに、自分の気持ちを悟られないように、必死になって隠していたから、装うことに長けたんだと俺は思うよ」
「あ……」
告げられたセリフに、思い当たるフシがありすぎて、口元に手を当てながらスマホから顔をあげる。視線の合った私を見、一ノ瀬さんはどこかやるせなさそうな面持ちになった。
「その顔、白鳥の気持ちに気づいてるってことか。さっきここでのふたりのやり取りを見ていて、すぐにわかったけどさ。幼なじみちゃんの初々しいその感じ、最近気づいたってところかな」
「当たりです」
さっきからズバズバ当てられるため、驚きを通り越して、リアクションに困ってしまった。
「アイツなりのケジメが、この復讐に加担するきっかけになったと思うんだ。今まで隠していたものを君にわかるように晒しつつ、ああやって復讐の手助けをすることによって、自分は守られる側じゃなく守る側なんだって、目に見える形で示しているんだよ」
「そうですね……」
もう一度、見せられているスマホの画面を見た。昔の学くんは、私の目から見ても、芸能人に引けを取らないくらいに格好いいと思う。だけどどんなに格好よくても、幼なじみとしてずっと過ごしていたのもあって、恋愛感情を抱く相手には、まったく見ることがなかった。
パソコンのモニターに映し出される学くんの様子に、私はずっと釘付けだった。
「学くん、本当に演技が上手……」
迫力のあるセリフを学くんが告げるたびに、あのコがすごくたじろいでいるのがわかるため、それを見ているだけで手に汗を握る。
「そりゃあ俳優をやっていたんだから、板についてるんじゃないの?」
「俳優?」
驚きながら一ノ瀬さんを見たら、私の顔を見て何度も瞬きする。
「あれ、幼なじみちゃん知らなかったの?」
「モデルをしていたのは知っていましたけど、俳優なんて初耳です」
私の返事に、目の前で気難しそうな表情をしながら呟く。
「あ~、俳優してるなんて恥ずかしすぎて、どうしても言えなかったんだな、アイツ。テレビで自分を見られたときのことを想像して、口を割らなかったに違いない!」
カラカラ大きな声で笑った一ノ瀬さんは、スマホを取り出して、なにかを画面に表示するなり、それを見せてくれた。
「深夜枠の学園恋愛ドラマで、白鳥は主人公のライバル役を演じていたんだ。これはそのときの番宣で撮影されたものさ」
スマホの画面に表示されていたのは、今よりも幼さの残る学くんの笑顔だった。
「そのドラマの撮影に俺の知り合いがいて、当時の話を聞いたんだけどさ。歌って踊れる有名なアイドルを主人公に起用したせいで、金銭面をなんとかしなけりゃいけなくて、とにかく安く済ませるために、顔がいい白鳥にドラマの話がいったってワケ」
「歌って踊れるアイドルのライバル役ですもんね」
主人公に対抗できるレベルの相手じゃなきゃ、恋のライバルになれないのはわかりすぎる。
「そうそう。でもいざ蓋を開けてみたら、アイドルの演技が酷くて、何度もNG出していたんだって。その点、白鳥はモデルなのにスムーズに演技したせいで、アイドルにえらくひがまれて、目の仇にされたんだと」
「学くん、すごいですね」
もう一度スマホに視線を注ぐと、一ノ瀬さんがなぞなぞを出すように問いかける。
「どうして演技がうまいと思う?」
「わかりません……」
ずっと一緒にいる学くんの演技のうまさが、どこからきているものなのか全然わからなかったので、即答してしまった。
「幼なじみちゃんに、自分の気持ちを悟られないように、必死になって隠していたから、装うことに長けたんだと俺は思うよ」
「あ……」
告げられたセリフに、思い当たるフシがありすぎて、口元に手を当てながらスマホから顔をあげる。視線の合った私を見、一ノ瀬さんはどこかやるせなさそうな面持ちになった。
「その顔、白鳥の気持ちに気づいてるってことか。さっきここでのふたりのやり取りを見ていて、すぐにわかったけどさ。幼なじみちゃんの初々しいその感じ、最近気づいたってところかな」
「当たりです」
さっきからズバズバ当てられるため、驚きを通り越して、リアクションに困ってしまった。
「アイツなりのケジメが、この復讐に加担するきっかけになったと思うんだ。今まで隠していたものを君にわかるように晒しつつ、ああやって復讐の手助けをすることによって、自分は守られる側じゃなく守る側なんだって、目に見える形で示しているんだよ」
「そうですね……」
もう一度、見せられているスマホの画面を見た。昔の学くんは、私の目から見ても、芸能人に引けを取らないくらいに格好いいと思う。だけどどんなに格好よくても、幼なじみとしてずっと過ごしていたのもあって、恋愛感情を抱く相手には、まったく見ることがなかった。