春色の恋−カナコ−[完]
新入社員
4月。

今日から私、浅野カナコは社会人1年生。

短大時代とは違って、就活でしか着た事のないスーツに身を包んで、乗りなれた電車に揺られる。

短大へ行く時と同じ電車なのに、通学時間とは違ってとにかくぎゅうぎゅうの満員電車。

朝から気合入れてセットした髪形も乱れちゃって、私毎日耐えられるのだろうか。

明日はもう一本早い電車にしてみよう、と心で誓いながらもなんとか目的の駅へ到着。

人の流れの身を任せるようにしてなんとか改札をでて、ほっと一息と行きたいところだけど。

「うわ、もうこんな時間!」

時計を確認すれば会社までぎりぎり間に合うかどうかの時間。

あわてて大通りを横切り、小走りで5分くらいのオフィスビルへ滑り込む。

ちょうど到着したエレベーターにタイミングよく乗り込むことができて。

ボタンを押そうとしたら、隣にいたスーツ姿の男性が目的の4階を押してくれた。

この人も同じ階で降りるんだと何となく顔を見上げたら、目が合ってしまって。
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