春色の恋−カナコ−[完]
「え?」

おにいちゃんの申し出に、びっくりして声をだしてしまった。

お父さんとお母さんが使っていた寝室は、この何年かですっかりおにいちゃんの部屋となっていて。

もともとおにいちゃんの部屋だった2階の私の隣の部屋は、お父さんとお母さんの荷物置き場になっていて。

それらを入れ替えようと思うと、ひとりではとても無理だと思う。

「だって、すごい荷物でしょ?」

「ベッドはもともと父さん達のだろ、荷物を入れ替えるだけだし」

その荷物がすごい量だと思うんだけど!

私が反論しようとした時、手元にあった携帯がメール受信を知らせる音楽を鳴り響かせた。

「河合だろ?電話しておいで」

「え、でも」

にっこりと優しく笑うおにいちゃん。

でも、明日一人でなんて絶対無理なのに。

「友達に手伝いを頼むから、大丈夫だよ」

「トモダチ?」

おにいちゃんの言葉に、さっき見た赤い車を思い出す。

「ねえ、さっき送ってくれた人?」

どきどきしながらおにいちゃんに問いかけると、少し驚いた顔をして私を見た。

視線が逸れたと思うと、下を向いてクスッと笑う。

私、何か変なこと言った?
< 126 / 241 >

この作品をシェア

pagetop