春色の恋−カナコ−[完]
「えっ」

片付けとか準備とかあるんでしょう?と河合さんは優しい声で言ってくれたけど。

でも、デートできないのも、私としては辛いし…。

かといって、おにいちゃんの言葉に甘えて彼女さんと二人に任せるのも気が引けてしまう。

『明日、お昼前に行くよ。一緒にやろう』

お手伝いを買って出てくれた河合さんに、仕事で疲れているからと断ったけど。

でも、心の中では一緒に過ごせるのがうれしくて、自然と顔がにやけてしまう。

『カナコちゃんと一緒に過ごせるならデートじゃなくてもいいんだよ』

デートはいつでもできるでしょう?

電話の向こうでそう話す河合さんは、まるで私のすぐ横にいるようで。

いつもならきっと優しく頭を撫でてくれるのかな。

優しい河合さんの言葉がうれしくて、明日のお手伝いをお願いすることにした。

「お昼ごはん用意して待っていますね」

『ああ、寝坊する予定だから、10時頃電話で起こしてくれるかな?』

「はい。おやすみなさい」

電話を切ってから下へ降りて行くと、おにいちゃんが食器を洗っていて。

河合さんが手伝いに来てくれることを伝えると、くすくすとおにいちゃんが笑った。
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