春色の恋−カナコ−[完]
普段、掃除の時にしか入ることのないおにいちゃんの部屋。

もうすぐ、お父さんとお母さんの部屋に戻るんだ。

おにいちゃんの指示のもと、分類された本をまとめて行く。

「あ、これ読みたいと思っていたやつだ」

「部屋へ持って行くといいよ」

こんな感じで、余分な作業が増えたりするけど、二人でやるとさすがに早く作業が進んで。

「いらない本は、リサイクルに出すかな」

いらないものだけリビングの隅へ移動させ、おにいちゃんの荷物は徐々にきれいにまとめられていった。

そろそろお昼の用意を始めようかと思っていると、インターホンが鳴って。

河合さんが来るには少し早いかな?と思いながら、玄関へと向かった。

「はーい」

相手を確認せずに扉を開けると、目の前にはすらっとしたデニムにTシャツというラフな格好の、背の高い女性が立っていた。

「こんにちは。カナコちゃん?」

「へ?」

初めて会う人に名前を呼ばれて、思わず変な声を出してしまった。

「あ、はい。カナコ、です」

恥ずかしくて、顔が赤くなっていく。

そうか、この人がおにいちゃんの彼女さん。
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