春色の恋−カナコ−[完]
「ふふ。かわいい。椎名カオリです」

よろしくね、とのばされた手はすらっとしていて。

私よりも高い身長は、何センチあるんだろう?

反射的に私も手を出して握手を交わすと、後ろからおにいちゃんのため息が聞こえた。

「玄関でいつまでやってんの?中へどうぞ」

「コウヘイ、カナコちゃんって本当に可愛いわね」

おじゃまします、と丁寧に挨拶をしてから家の中に入っていくカオリさん。

私よりもずっと年上で、見た目もしぐさもすべてが素敵なお姉さんって感じ。

どきどきしながらおにいちゃんとカオリさんに着いて行くと、ダイニングテーブルの上に紙袋をいくつか置いて。

「お昼まだでしょう?お弁当作ってきたよ!」

後で食べようねと私に笑いかけてくれたカオリさんは、さあお昼までもう一息がんばろう!とおにいちゃんの背中を押して作業を始めてしまった。

おにいちゃんの指示のもと、てきぱきとよく動くカオリさんに見惚れつつも私も負けじと作業を続けた。

一通り細かいものをまとめることができたころに、再びインターホンが鳴って。

少し前にメールが届いていたので、今度は河合さんだと確信のもと玄関を開けた。
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