春色の恋−カナコ−[完]
好きな人を困らせるようなことをする…そんな愛情を私には理解できない。

でも、それは今私が河合さんに愛されているから?

もし、私が佐藤さんの立場だったら?

「まさか、カナコちゃんにまで迷惑をかけるようなことになるなんて思わなかったんだ」

俺が悪かったなんて、頭を下げられても私も困ってしまう。

「コウスケさん。私はコウスケさんを信じてます」

佐藤さんのやり方は間違っているんじゃないかと思う。

彼女が何を思い、どうやって河合さんに接してきたかは私にはわからない。

河合さんが彼女の行動に、どうしてきたかもわからないけど。

私の知る限り、河合さんはたとえ相手に嫌なことをされたとしても、ひどい態度をとったりするような人ではないと思っている。

だから。

私の好きな人だから。

「こ、怖かったけど…」

でも、私を助けてくれるのは河合さんだから。

河合さんにぎゅっと抱きついて震えていた身体を落ち着かせる。

ごく自然に背中にまわされた河合さんの腕も、私の気持ちを落ち着かせてくれる。

「もう二度とこんなこと無いから」

「うん」

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