春色の恋−カナコ−[完]
「どうしたの?」

読んでいた雑誌を閉じておにいちゃんをみると、少しだけ笑ってから持ってきた水に口を付けた。

「カナコ。結婚だけどさ」

「え?」

いつもと違って、なんだかはっきりしないおにいちゃん。

少し顔が赤く感じるのは、気のせい?

「俺が先でもいいかな?」

「えっ!?」

予想もしないその言葉にびっくりして、大きな声をあげてしまった。

結婚って、おにいちゃんが?

「そんなに驚くなよ」

私から視線を逸らして鼻の頭をかきながら、おにいちゃんが照れていて。

こんな風に恥ずかしがるおにいちゃん、初めて見たかも。

私よりも7つ年上で。

いつでも私よりもずっと大人で、おにいちゃんでありながらもお父さんのように感じる時もあった。

そんなおにいちゃんが、私の前でこんな風にかわいらしい表情をするなんて。
< 184 / 241 >

この作品をシェア

pagetop